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布施のおすすめスポット

出汁の町・大阪布施で見つけた、やさしい昆布土産【浪花昆布|昆布専門店】

旅のおわりに、もうひとくちだけ大阪を味わいたくなる夜がある。観光地ではなく、暮らしの延長にあるような場所。
布施の「浪花昆布」は、そんな空気を纏った昆布佃煮の専門店。控えめで、まっすぐで、どこか懐かしい。その味と佇まいには、大阪の台所を支えてきた静かな文化が息づいていた。

スポット情報
浪花昆布
住所 大阪府東大阪市足代1-21-11GoogleMap
電話番号 06-6726-6888
営業時間 9:30~18:00
定休日 木曜日

静かな確信が、佇んでいた

テーブルの上の昆布の佃煮

「うちはやっぱり、志めじ時雨やね」
そう言って差し出されたパックから、しめじと昆布の控えめな香りが立ちのぼる。

浪花昆布|外観(看板)

布施駅から歩いてすぐ、本町フラワーロードのアーケード沿いにある「浪花昆布」。

見逃してしまいそうな外観だけれど、足を止めた人の表情には、なぜか懐かしさがにじむ。日々の台所にすっとなじむ味と佇まい。観光とはちがう、大阪のもうひとつの顔がある。

昆布が文化になった町

浪花昆布|内観(昆布メニュー)

大阪は昆布の“産地”ではないけれど、“旨みの町”ではある。
江戸時代、北前船が北海道から運んだ昆布が台所に届き、やがて佃煮や出汁の文化が育まれた。

浪花昆布|店前ポップ

とろろ、おぼろ、削り、そして佃煮。
一枚の昆布が、台所のなかでいくつもの姿に変わる。
「浪花昆布」の棚には、そんな日常の積み重ねが詰まっている。

“選ぶ”ことが、味になる

浪花昆布|店主

「自分では炊いてへんけど、選ぶ目には自信あるよ」
店主はそう言って笑う。

塩梅、風味、食感——それぞれの“持ち味”を見極めた上で、“いいとこどり”のセレクトをしている。
仕入れ先は、長年信頼している加工店ばかり。自家製ではなくても、味にはこの店ならではの筋が通っている。

浪花昆布|佃煮を真空パックする様子

量り売りやパック詰めの佃煮は、注文ごとに丁寧に空気を抜き、紙袋へと包まれていく。
作業の一つひとつに、気負いのない職人の所作がにじんでいた。

半世紀を超えて、変わらぬまなざし

店主が大阪に出てきたのは、中学を卒業した昭和37年。
最初に働いたのは、布施・公設市場にあった昆布屋だった。
義兄の店を手伝うようになり、それがいつしか自分の店になった。

浪花昆布|ちりめんのくぎ煮を詰める様子

この場所で、昆布を見つめ続けて、もう50年以上。
目立たないけれど、なくてはならない——そんな店が、ここにはある。

志めじ時雨が、名刺がわり

人気No.1|志めじ時雨

志めじの歯ごたえと、昆布のうまみ。
「志めじ時雨」は、ごはんにも酒にも合う、店の看板商品。
甘辛すぎず、出汁の芯がちゃんと残る。

食べ終えたあと、ふっと静かになるような余韻がある。
佃煮だけど、どこか詩的で、少し強くて、優しい味。

贈りものは、顔が浮かぶ味

贈答用の詰め合わせ

年末が近づくと、店内には贈答の注文がずらりと並ぶ。
「この人は志めじ多めに」「椎茸昆布も忘れんといて」「ちりめんじゃこは、あの家の子が好きやねん」

送り主も受け取り手も、店主の記憶にちゃんと刻まれている。
“お歳暮”という言葉が、まだ暮らしの中で生きている。
その空気ごと、包んでくれるのが、この店の強さかもしれない。

香りとともに、旅が戻ってくる

浪花昆布|店前ポップ

紙袋を開けた瞬間、ふっと立ちのぼる昆布の香り。
その匂いにまじって、大阪のざわめきや布施のアーケードの風景がよみがえる。

「浪花昆布」の味は、旅の記憶をそっと日常につなぎとめてくれる。
観光地のお土産じゃなく、暮らしの中でふとあらわれる“大阪の余韻”。
そんなひとくちを、ぜひ。

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