ホットドッグに、定食にかき氷。できたて看板、手探り営業中。【めぇちゃん|ホットドッグ専門店】
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2025年7月1日、布施・みやこまち通りにオープンしたホットドッグ「めぇちゃん」。
かつて人気居酒屋「縁にち」があった場所を引き継ぎ、店を始めたのは、その“縁にち”で働いていた元スタッフ・めぇちゃんだ。ホットドッグにローストビーフ、かき氷に定食まで。「何屋なのか、まだ定まらない」。でも、その揺れこそが、まちでお店をはじめるということなのかもしれない。
看板が変わった日

布施駅から3分ほど。みやこまち通りの中ほどに、見慣れない白い看板がひとつ。軒先に灯る明かりの中、手描きのような「め」の字が大きく、そのまわりを赤い筆跡がぐるりと囲っている。
「ホットドッグ めぇちゃん」
商店街のなかで、白がこんなにも目立つなんて思ってもみなかった。赤提灯やカラフルなのぼりに囲まれて、ふっと空気が抜けたような、静かな余白。前を通る人が、立ち止まり、看板を見上げる。「ここ、なんやろな」って。

かつてこの場所には「縁にち」という居酒屋があった。夜になるとにぎやかな声が漏れていたあの店。そこに新しく店を開いたのは、その“縁にち”で働いていた、めぇちゃん本人だった。
ホットドッグは、きっかけにすぎなかった

「美味しいホットドッグって、意外とないよね」そんな一言から、このお店は始まった。
パリッと焼いたパンに、スパイスの効いたソーセージ。ケチャップもマスタードも、どこか懐かしい。店名に冠したとおり、看板メニューはホットドッグ。

だけど、食べてみて印象に残るのは、その横に並んだローストビーフかもしれない。バーガーでかぶりつくのもいいし、持ち帰って晩ごはんのおかずにする人もいるそうだ。

派手な宣伝をしたわけでもないのに、気づけば仕込みが追いつかなくなってきた。「家のスライサーやと全然追いつかへんようなって、しゃあないから業務用のん買うたんです」と、うれしい悲鳴がこぼれる。
まちの中で育っていく店

はじめは、持ち帰りだけのつもりだった。
それが今では、「お皿、返しにきたで〜」と、近所のおっちゃんが器を片手にやってくる。2軒隣の八百屋さん、通りの魚屋さん、酒屋のお兄さん。みんながふらっと立ち寄って、ふらっと帰っていく。

布施が一年でいちばん賑やかになるのは、やっぱり「十日戎」。商売繁盛を願って、多くの人がえべっさんに手を合わせにやってくる。
そのとき、まちを華やかに彩るのが、福娘の女の子たち。でも、そんな彼女たちがホッとひと息つける場所って、案外なかったりする。

「せっかく来てくれてるのに、ゆっくりご飯食べられる場所がないなあって思って」そう話すめぇちゃんは、お店の奥にイートインスペースをつくった。
それをきっかけに、定食やカレーなど、あたたかいランチも少しずつ増えていった。
“決まらなさ”がちょうどいい

お客さんの「こんなんあったらうれしいな」に耳をすませながら、試して、また少し変えてみる。
めぇちゃんの店は、いつだって“実験”の連続だ。

「やってみよか」「もうちょい変えてみる?」そんな会話が、いつも厨房から聞こえてくる。がんばりすぎず、自分たちのペースで、まちと一緒に少しずつかたちを変えていく。
「このまま、決まらん店でもええんちゃうかなって」ふと笑う彼女の言葉が、店の空気をゆるめてくれる。
名前のない“好き”が、ちゃんと届く

ジャンルにこだわらなくてもいい。完成してなくてもいい。「なんか、いいよね」って思ってもらえるほうが、ずっと強い。
ホットドッグをかじりながら黒板を見ると、「今日の日替わり」が書き加えられていた。なんでもない日常に、そっと差し出される一皿。

「何屋さんかわからんけど、めぇちゃんのお店やんな」そんな風に呼ばれることが、きっとこの場所の正解なのだ。
布施の町に、新しい“ふつう”ができていく。それはたぶん、すごく静かなことだけど、ものすごく強いことでもある。