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ハンバーグも、カツも、エビも。デミグラスが語る、昭和の昼。【自由亭|洋食専門店】

布施のまちで、洋食といえば『自由亭』。1967年創業、カウンターだけの小さな店は、変わらぬ味と温もりで今日も迎えてくれる。えびフライ、ハンバーグ、ヒレカツ──皿の湯気の向こうから「おかえり」と聞こえそうな一皿。

厨房には、名店「北極星」で腕を磨いた初代の味を継ぐ2代目。そして笑顔の奥様。いつもの顔と、はじめての人が並んで座る、まちの洋食屋さん。変わらないって、実はすごく贅沢なことかもしれない。

スポット情報
洋食専門店 自由亭
住所 大阪府東大阪市長堂1-9-20GoogleMap
営業時間 11:30~14:20
定休日 水曜日
喫煙可否 禁煙

この一皿に、町が集まる。

正午前。カウンターはほぼ満席。その多くがAランチを頼む。えびフライ、ハンバーグ、ヒレカツ、ハム。ごはんと味噌汁がついて、トレーの上がすぐににぎやかになる。

なかでも目を惹くのは、どっしり構えたヒレカツ。衣のひと粒までが香ばしく、黒く光るデミグラスが、たっぷりとかかっている。そのすぐ隣には、そりかえるように立つえびフライ。しゅっと揚がった尾っぽが、まるで旗みたいで、なんだか頼もしい。

ハムのかげに、こっそり隠れるように潜んでいるのは、丸くて控えめなハンバーグ。最後に「あ、ここにいたんや」と気づいて、ちょっとだけうれしくなる。

全員主役のようでいて、ちゃんとチームになってる。口に運ぶたびに、ちいさな「うれしい」が重なっていく。

黒々としたソースは、ウスターの酸味とデミグラスの甘みのちょうど真ん中。濃厚だけど、くどくない。たぶん、毎日のように通う誰かの胃袋を思っての、やさしいチューニング。

この一皿が、まちの洋食屋の“記憶”そのもののように思えてくる。

割り箸を、どうぞ。

自由亭で過ごす時間は、どこか“家の延長”みたいな心地よさがある。

たとえば、常連のおじさんが「切っといてや〜」と声をかけると、店主はナイフじゃなく、割り箸をスッと差し出す。そんなやりとりに、笑いながらうなずく奥様。

ナイフとフォークが基本のスタイルでも、それを強要することはない。「お客さんが食べやすいように」が、ここのスタンダード。

「飲食店」というよりも、「関係性の場所」。そう言ったほうが、しっくりくる気がする。

絵本みたいな、オムライス。

もうひとつの看板メニュー、「オムライス」。

ケチャップライスに、うすく焼いた卵をふわっとかぶせて、真ん中に赤いケチャップのライン。どこにも奇をてらったところがなくて、「子どもの頃に描いた理想のオムライス」って、たぶんこんな姿だと思う。

この味をつくったのは、洋食の名門『北極星』で腕を磨いた初代。その味を、今は2代目がひとつひとつ丁寧に引き継いでいる。

派手じゃないけれど、ちゃんと記憶に残る味。そういう料理を、静かに出し続ける店が、まちにあるという事実に、ふと救われることがある。

変わらないことが、いちばんのやさしさかもしれない。

店内は、ぐるりと囲むコの字カウンター。一人で黙って食べる人、夫婦で笑い合う人。気づけば、となり同士がちょっとだけ席を詰め合っている。

「ご飯、少なめにしましょうか?」「お持ち帰りにしましょうか?」そんなひと言が、自然と交わされる。

2024年の夏、一部のメニューが100円だけ値上げされた。理由は、牛肉や油の価格高騰。それでも「なるべく続けられる範囲で」と、価格を最小限に抑えた。

料理って、素材だけじゃなくて、つくる人の気持ちも味に影響するんだと、ここに来ると実感する。「また食べたい」と思ってもらえるように。その想いが、静かに、でも確実に、皿の上に乗っている。

営業してるかな、と思ったら。

ご夫婦での営業だから、たまに臨時休業もある。そんなときはInstagramをのぞくといい。手書きのメニューや営業情報が、ゆるやかにアップされている。

気取っていない。でも、ちゃんと美味しい。そして、ふとしたときに思い出す。あの黒くて、甘いソースのこと。

それは、まちの記憶の一部になっているのかもしれない。

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