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風呂上がりに、お父ちゃんが淹れたかった一杯を。【第二寿湯 焙煎小屋|コーヒー】

銭湯の帰り道、牛乳じゃなくてコーヒーという選択肢があるまちが、ちょっと好きだ。

80年以上続く銭湯、第二寿湯の隣にある「第二寿湯 焙煎小屋」は、湯気の残る身体をそのまま連れて行ける場所。

扉を開けると、焙煎したての豆の匂いがふわっと広がる。ここは、先代が叶えたかった「お風呂あがりにコーヒーを飲む」という、ささやかで贅沢な夢の続き。

派手さはないけれど、暮らしのリズムにすっと馴染む一杯が、このまちの日常を少しだけやさしくしている。

スポット情報
第二寿湯 焙煎小屋
住所 大阪府東大阪市長堂2丁目17−22GoogleMap
電話番号 090-8577-3751
営業時間 14:00 ~ 19:00
定休日 月曜日
第1・第3日曜日
(月初めは火曜日・水曜日も休み)

銭湯のとなりで、時間が続いている

布施駅から北に歩いて7分ほど。第二寿湯は、このまちで80年以上湯を沸かし続けてきた銭湯。その隣にあるのが、「第二寿湯 焙煎小屋」。ぱっと見は、通り過ぎてしまいそうな佇まいの店だけれど、コーヒーの香りがふっと鼻をかすめて、足が止まる。

この店のはじまりは、店主のお父ちゃんが趣味で始めたコーヒー豆の焙煎だった。焙煎機は、当時使っていたものを今もそのまま使っている。年季の入った鉄の音、少し不揃いな温度感。それでも、この焙煎機でしか出せない味がある。

お父ちゃんの夢は、「風呂上がりにコーヒーを飲んでもらうこと」。でも、その景色を見る前に、お父ちゃんはこの世を去った。その夢の続きを引き受けたのが、娘さんだった。

ふたつのブレンドと、お父ちゃんの味

豆は全て自家焙煎で、コーヒーは2種類のみ。深煎りの《シルバーブレンド》と、浅煎りの《マイルドブレンド》。どちらも、「お父ちゃんの味」を再現しているという。

シルバーブレンドは、深みがありしっかり苦い。湯上がりの身体にすっと入って、背筋が少し伸びる感じがする。風呂あがりの火照った身体に、すっと入ってくるようなバランスを意識しているらしい。

値段は一杯350円。そして、銭湯の前後なら200円で飲める。

特別なことはしていないけれど、風呂とコーヒーが自然につながっている。それだけで、この場所に理由が生まれているように思える。

焼き芋とコーヒー、ちょうどいい関係

コーヒーのお供は石焼き芋。

店主は、もともと八百屋で働いていた人だという。だから、焼き芋に使う芋も『甘太くん』『シルクスイート』などこだわりの品種。遠赤外線でじっくり焼かれた芋は、ねっとり甘い。

深煎りコーヒーの苦味と、焼き芋の甘さ。交互に口に運ぶと、不思議と落ち着く。アツアツの焼き芋も、ヒヤヒヤに冷やしたものも用意されていて、その日の気分で選べるのがうれしい。

そっと並ぶ、もうひとつの暮らし

店の奥には、保護猫たちが過ごすスペースがある。店内に猫がいるわけではないけれど、この場所のすぐ隣で、静かに暮らしている。

店内に並ぶグッズやドリップバッグは、その売上の一部が保護猫の活動費になっている。ただ、コーヒーを買うこと、飲むことが、ほんの少し誰かの暮らしにつながっている。

暮らしの延長に、そっと命がある。それを特別にしすぎないことが、ここではいちばん大切にされているような気がする。

変わらないもの、受け継がれたもの

焙煎機は変わらない。コーヒーの種類も増えない。でも、店を守る人は変わった。お父ちゃんの叶わなかった夢は、形を変えて、いまも続いている。

夕方から夜にかけて、銭湯から立ちのぼる湯気と、ドリッパーから立ち上がるコーヒーの湯気が、同じ空気の中で混ざっていく。その景色は、昨日も今日も、たぶん明日も変わらない。

湯冷めする前に、一杯飲む。今日をちゃんと終わらせるために、立ち寄る。

「風呂上がりにコーヒーを」。
お父ちゃんの言葉は、いまもこの場所で、静かに続いている。

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