布施駅から徒歩9分。夜の路地に、ぽつんと灯る屋台がある。
コの字のカウンターは8人も入ればいっぱいで、真ん中には丸い鍋。ぐつぐつ、というより、じんわり。長年この場所で湯気を立て続けてきたおでん屋だ。
仕事終わりにふらっと寄って、串を一本、熱燗を一杯。気づけば、知らない人と同じ鍋を囲んでいる。そんな夜が、ここでは今日も普通に続いている。
| 住所 | 大阪府大阪市東成区深江南3丁目22−9GoogleMap |
|---|---|
| 電話番号 | 090-8988-2444 |
| 営業時間 | 21:00~25:00 |
| 定休日 | 日曜日、祝日 (雨の日もお休み) |
路地裏で、鍋が続いている
21時を過ぎると、今夜も屋台の提灯が灯る。
鍋の前に立つのは三代目のお母さん。背中は小さいけれど、動きに迷いがない。串を返し、鍋を見て、お客さんを見て、また鍋を見る。その一連が、長年のリズムみたいに身体に染みついている。
コの字カウンターは8人ほどで満席。肩と肩が自然に近くなる距離感も、屋台らしい。知らない人の肘が当たっても、なぜか気にならない。みんな同じ湯気の中にいるからかもしれない。
丸鍋の中に、夜が詰まっている
中央に置かれた大きな丸鍋。
大根、玉子、厚揚げ。牛すじに、ちくわ。そこに、ねぎまや梅焼き、鯨のコロなどの変わり種まで、串が雑多に詰め込まれている。
整然としていないのに、居心地がいい。それぞれが、ちゃんと自分の居場所を知っている感じがする。
ねぎまは塩で。出汁に浸かっているのに、最後は塩で締める。その一手間が、ちょっと粋だ。
鯨のコロは、今ではあまり見かけない。皮下脂肪の部分で、噛むと独特の甘みがある。懐かしい、という言葉が似合う味かもしれない。
串は一本150円。鉄砲串は300円。
値段を見て選ぶというより、今の気分で指を伸ばす感じ。

おでんの合間に、どて煮をつまんだり、かすうどんで締めたり。派手じゃないけど、ちゃんと夜を終わらせてくれるものが揃っている。
出汁割りという、ゆるい寄り道
この店でよく出るのが、おでんの出汁割り。日本酒が入ったちろりを鍋に突っ込んで温め、おでんの出汁で割る。それだけ。でも、これが妙に沁みる。酒でもない、スープでもない、その中間。寒い夜に飲むと、身体の奥がほどける。
誰かが頼むと、つられて自分も頼みたくなる。
「もう一杯いっとく?」そんな会話が、自然に生まれるのも、この一杯のせいかもしれない。
知らない人と、同じ湯気に立つ
常連さんも、初めての人も、ここではあまり区別されない。隣の人が何を頼んだかが見えて、同じものを頼んでみたり、聞いてみたり。気づけば、少しだけ会話が生まれている。
屋台って、こういう場所だったよな、と思う。誰かの居場所でありながら、誰のものでもない感じ。
同じ鍋で、これからも
鍋も、場所も、大きくは変わっていない。でも、店を守る人は、少しずつバトンを渡そうとしている。三代目のお母さんが引退したら、息子夫婦が継ぐ予定だという。
同じ鍋、同じ出汁。でも、きっと少しずつ変わっていく。それでいい気がする。長年続く理由は、たぶんそこにある。
湯気の向こうで、今日も誰かが串を選んでいる。特別じゃない夜を、特別にしないまま。