商人の町・布施。アーケードの南入り口すぐに、池田屋珈琲はある。
フチの欠けた灰皿、ゲーム機のテーブル、シャキッとしたきゅうりのサンドイッチ。全部がちゃんと、この町の時間に寄り添ってる。
喫茶店は、ただの喫茶店じゃない。誰かの朝であり、休息であり、ちょっとした社交場でもある。
大阪の下町で、そんな景色を切り取ってみた。
住所 | 大阪府東大阪市足代1-20-14GoogleMap |
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電話番号 | 06-6721-2663 |
営業時間 | 7:30~17:00 (モーニング ~11:00) |
定休日 | なし |
喫煙可否 | 喫煙可 |
SEKAI PASS特典 | モーニング無料(朝食付きプランのご予約者のみ) |
商人たちのまちの、入り口で
朝8時、布施本町商店街のアーケードに光が差し込むころ。
“池田屋珈琲”には、すでに常連らしきおじさんが新聞を開いている。コーヒーの湯気がちょっと揺れて、それを合図にモーニングの時間が始まる。
昔から布施は、商人のまちだ。
小売りや製造業に卸業。朝が早い彼らにとって、喫茶店は単なる飲食の場じゃない。仕入れと開店の間のほんの30分、身体と気持ちを整える小さな基地みたいなもの。
池田屋珈琲は、そんな“間”を受け止めてきた店だ。
“ミックス”に、町の空気が挟まってる
まずは、名物のミックスサンドから。
ふわふわの白パンに、分厚い玉子焼きがどっしり挟まっている。きゅうりのシャキシャキと、マーガリンのコクがちょうどいいバランスで、口に入れると、朝の身体がゆっくり目を覚ましていくような気がする。
関西の喫茶店といえば、この厚焼き玉子サンド。
関東の「ゆで卵にマヨネーズ」ではなく、きちんと“焼いてある”ところに、手間を惜しまない関西らしさが見える。
さらに、小さなサラダも無料で。別に華美じゃないけど、ちょっと嬉しい。
こういうさりげない“おまけ”に、町の人情みたいなものを感じる。
昔のまま、変わらずにある景色
店内に入ると、目に飛び込んでくるのは年季の入っ
た螺旋階段、模様入りのレトロな床、壁際に積まれた雑誌。
そして何より、テーブル型のゲーム機。今では1台となったそれは、かつてゲーム喫茶として使われていた名残だ。
喫茶店というよりも、「昔からそこにある空間」。
時間の流れとともに役割が少しずつ変わっていっても、町に馴染んだ場所は、そのまま“景色”になっていく。
「変わらないね」なんて、誰かがぽつりとこぼす声が聞こえた気がした。
自家焙煎と、もう一杯の余白
池田屋珈琲のもう一つの顔。それは自家焙煎の豆を扱う業者としての顔だ。
焼きたてのパンも、自家製の豆も、全部自前。だからこそ、香りも食感も、どこか誇らしげだ。
ホットコーヒーは、おかわり無料。
せかせかした朝には少し贅沢すぎるけれど、2杯目が本番みたいなところもある。
新聞を閉じたおじさんが、もう一杯を前にちょっとだけ姿勢を正している。その背中が、なんだかいい。
SEKAI HOTEL Fuseの“朝”でもある
実はこの池田屋珈琲、SEKAI HOTEL Fuseの朝食会場でもある。
宿泊ゲストは、SEKAI PASSを見せるだけでこのモーニングを無料で楽しめる。(※朝食付きプランをご予約のゲストのみ)
旅の朝、知らない土地の喫茶店で、知らない人たちと肩を並べて過ごす時間。
それは“観光”ではないけれど、なぜだか強く記憶に残る“旅の風景”になる。
朝は、みんなのもの
商人の姿が少なくなった今でも、池田屋珈琲は朝からにぎやかだ。
マダムたちが近況を話し、おじさんたちが黙ってサンドイッチを頬張る。
そんな光景の中に、宿泊客がふと溶け込んでいく。
観光地ではない。でも、確かにこの町の朝がここにはある。
派手さはない。でも、日常ってこんなふうに、じんわり身体に染みてくるものかもしれない。
サンドイッチのパンがふわふわだった朝のこと、きっと何年かしても、ふと思い出すような気がする。