場末の渋さとは良い意味で異なる、「ここなら大丈夫」という安心感が迎えてくれる。
場所はジャンカラ・ディープ布施店。
そこにあるのは、スナックのようで、でもちょっと違う、“スナック風カラオケ喫茶”という不思議な空間だ。
お酒がなくてもいい。十八番がなくてもいい。拍手ひとつで、見知らぬ誰かと繋がれる。
そんな、優しい社交場。
知らないまま通り過ぎるには、ちょっともったいないかもしれない。
住所 | 〒577-0056 大阪府東大阪市長堂1-2-1 B1〜1F A+FUSEビルGoogleMap |
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電話番号 | 070-2274-9713 |
営業時間 | 24時間営業 |
定休日 | なし |
喫煙可否 | 禁煙 |
いつものジャンカラじゃ、ないらしい。
東大阪・布施。近鉄の駅を降りてすぐ、見慣れたジャンカラの看板でありながら、ちょっと雰囲気の違う趣がある。
「ディープ布施店」。その響きだけで、なにか面白いことが起きそうな気がする。
中に入ると、スナック街のような看板が並ぶ廊下。実はこれ、全部カラオケ個室の看板らしい。
「じゅて~む」「スナックカッパドキア」…名前だけで、ドラマのような世界観に引き込まれる。
そして、店の中央に構えるのが、“スナック風カラオケ喫茶”。
ここは、ジャンカラが提案する“新しい大人の遊び場”なのだ。
歌でつながる、不思議な空間
店内には、コの字型のカウンター。中央にはステージがあるわけじゃない。
誰かが歌えば、それをぐるりと囲んだお客さんが自然と耳を傾ける。
拍手が起こる。頷きが交わる。たった一曲で、知らない人とも気まずくない。
「十八番とかなくていいんですか?」と聞くと、常連の女性が笑ってこう返してくれた。
「知らん歌の方が盛り上がることもあるしね。反応を試す、みたいな」
スナックと聞くと、なんとなく構えてしまう。でもここは、あえて肩書きを脱がせてくれる場所。
誰もが一瞬で“顔なじみ”になれるような空気がある。
知らないはずの場所が、なぜかやさしい。
そもそも、スナックという文化は「紹介」があってこその世界だった。
どこか敷居が高くて、入るには勇気が要る。
でもこの場所は違う。ジャンカラという看板があるだけで、安心感がある。
お酒を頼まなくてもいい。ドリンクバーだって使える。
「おごる」とか「口説く」とか、そんな儀式がなくても成り立つスナックなんて、ちょっと不思議で、でも心地いい。
しかも、料金はいつものカラオケと同じ。
初めての人も、財布の心配なしに飛び込める。
スナックは、“夜の公園”だったのかもしれない
たとえば昔、公園のベンチで知らないおじさんに話しかけられて、なぜか少し話が弾んだ、みたいな夜があった。
このカラオケ喫茶にも、あの時と似たような“夜の不思議な出会い”がある。
歌に合わせて手拍子をする人。ちょっと遠慮しながら、でも確実に居場所を見つけていく人。
誰かの歌に笑い、誰かの話にうなずきながら、ちょっとずつ心がほぐれていく。
ここは「誰かの店」ではなく、たまたま集まった人たちでつくる、その瞬間の“場”なのだと思う。
それって、もしかすると、スナックの本質なのかもしれない。
ちょっと背伸びして、大人の夜にまざってみる。
本来、スナックは昭和の大人たちの居場所だった。
でも今は、平成生まれも、Z世代も、ほんの少しの好奇心でこの場所に足を踏み入れる。
お酒は飲めなくてもいい。歌がうまくなくてもいい。
ただ、誰かと同じ時間を、少しだけ分け合うだけでいい。
“スナックっぽい”が、“ちょうどいい”。
そんな新しい形の夜が、布施にはあった。