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布施のおすすめスポット

15時までモーニングで、早起きが苦手な人を待つ。【あめりか亭|喫茶店】

布施駅の高架下、ポッポアベニューの片隅に「あめりか亭」がある。
1973年の創業から、変わらないリズムで時を刻んできた喫茶店だ。

ここではモーニングが午後3時までやっているし、ケーキセットはいつもどこか朗らかで、コーヒーはおかわり自由。
気取らないのに沁みてくるのは、きっと「いつも通り」を丁寧に続けてきたから。

交差する暮らしと時間のなかに、あめりか亭の“まいにち”が息づいていた。

スポット情報
あめりか亭
住所 大阪府東大阪市長堂1-1-43GoogleMap
電話番号 06-6783-7777
営業時間 7:00~20:00
定休日 なし
喫煙可否 禁煙

高架下で見つかる、静かなリズム

近鉄布施駅の改札を出て、アーケードの屋根の下を歩く。夕飯の材料を抱えた手、スマホをのぞき込む制服姿、散歩途中の犬と目が合う。

その流れの一部みたいに「あめりか亭」はある。

ガラス越しに見える、新聞と湯気と、少し背中の丸い常連客。気張らない空気の中に、なぜかホッとする余白がある。

創業は1973年。50年という時間の中で、派手に何かが変わったわけじゃない。

けれどその分、静かに“積み重ねられてきた日々”の確かさが、ここにはある。朝の光も、午後の温度も、同じ椅子が覚えている。

モーニングは、午後3時のやさしさ

ここのモーニングは遅くまでやっている。
早起きが苦手な人も、仕事を終えてやってくる人も、
「まだ朝ですよ」と言ってくれるようなやさしさがある。

メニューは3種類。トースト、卵サンド、ツナサンド。
ロールパンは軽く焼かれて、ふわふわの食パンはそのままで。
整った断面の美しさは、手間と気遣いの表れのようでもある。

添えられたサラダには、ロースハムと缶詰のパイナップル。
少しだけ昭和の香りがする。でも、どこか新鮮でもある。
和風かフレンチか。ドレッシングを選ぶ小さな時間も、ひとつの楽しみ。

「おかわり、いかがですか」の魔法

ホットコーヒーと紅茶はおかわり自由。
自分でポットの前まで行ってもいいし、
タイミングを見て店員さんが声をかけてくれることもある。

その「おかわり、いかがですか」のひと言が、不思議とやわらかく響く。
さっきまでのモヤモヤが、少しだけ晴れるような気がする。
次の一杯は、飲み物というより「時間の続き」なのかもしれない。

うれしいのは、ポットにアメリカン珈琲が用意されていること。香ばしさはそのままに、すっと軽い飲み口。

地元のおばちゃんたちは、たいていアメリカンを選んで、ゆっくりおしゃべりしている。誰かとの会話にも、ひとりの読書にも、ちょうどいい温度。

一応、90分で3回まで。だけど、そこまできっちりしてない。
そのゆるさが、過ごす時間をもっと自由にしてくれる。

午後になると、ショーケースが主役になる

午後の人気は、ケーキセット(850円)。
ショーケースの前で迷う時間が、もう楽しい。
モンブランにショコラケーキ、ロールケーキ。どれも飾りすぎず、素朴な顔つき。

中でもレモンパイは、ふんわりメレンゲと甘酸っぱいレモンクリームが絶妙。ひと口食べれば、子どものころの“ごほうび”を思い出すような味がする。紅茶との組み合わせで、午後が少しだけやさしくなる。

コーヒー、紅茶、コーラ。選べるドリンクも、その日の気分に寄り添ってくれる。

なんでもない午後が、ちょっとだけ光を帯びる。
そんな景色が、ここにはある。

ちょっと変わって、ちゃんと変わらない

2025年の春、あめりか亭は全面禁煙になった。
それに合わせて少しの間お休みし、壁紙も新しくしたそうだ。
でも、目に映るものの奥は、変わっていない。

「いつもの席」があって、「いつもの注文」があって、
そこに来る人たちが、また今日も同じように笑っている。

新しい風は、前の空気をちゃんと抱きしめていた。
時代の中で、少しだけ背筋を伸ばしながら、それでも「ここ」であり続けている。

つながっていく、ちがう時間


午前11時。毎日同じ席に座る人が、ゆっくりとモーニングを食べ終える。
午後3時前。わたしはケーキセットを選びに、この店へ入る。

同じテーブル、ちがう時間。交わらないけれど、たしかにつながっている。

この店の「まいにち」は、そうやって続いている。
今日という日が、特別じゃなくても、ちょっとやさしくなる場所。

誰かの朝と、わたしの午後。
あめりか亭のカップの湯気に、それがふわりと重なる。
たぶんこれが、「喫茶店で生きる」ってことなんだと思う。

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