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布施のおすすめスポット

静けさの向こうに、“おまかせ”という贅沢を。【楽てん|割烹居酒屋】

あかつき通りの灯りは、ネオンよりも、ほのかな明かりが似合う。焼き鳥の煙、笑い声。そのざわめきの奥に、ふっと静けさを忍ばせたような店がある。『楽てん布施店』。

土壁と控えめな看板の奥に、無口な職人と、やさしい女将が待っている。
メニューはいらない。ただ、「おまかせで」と預けるだけ。そんな夜は、気づけば肩の力が抜けて、自分を取り戻せる気がする。

スポット情報
楽てん 布施店
住所 大阪府東大阪市長堂1-2-11GoogleMap
電話番号 06-6784-9669
営業時間 17:30~23:00
定休日 日曜日
喫煙可否 禁煙

にぎわいの路地に、静けさを仕込む

「楽てん 布施店」のあるあかつき通り

布施駅から少し歩いた先。焼肉屋やバーが連なるあかつき通りは、酒好きにはたまらない通りだ。
そんなにぎやかな場所の片隅で、そっと呼吸を整えるように佇むのが『楽てん布施店』。

土壁に小ぶりな看板。通り過ぎそうな静けさが、かえって気になる。店というより、目印のない待ち合わせ場所みたいだ。

空気がやわらぐ、和の余白

店内|カウンター

のれんをくぐると、音のトーンがすっと変わる。
カウンター10席、小上がりの掘りごたつが3卓。席と席のあいだにちゃんと“余白”があるから、自然と心までゆるむ。

カウンターの中では、寡黙な大将が黙々と包丁を握っている。その所作には、誇張のない美しさがある。

隣では、女将がふっと笑って「ようこそ」と迎えてくれる。その一言が、最初の一杯より先に、体をほぐしてくれる。

“待つ”という贅沢

カウンターから見える板前の手仕事

『楽てん』では、注文してすぐに料理は出てこない。
それは、板前である大将が、仕込みから盛りつけまでひとりで手をかけているからだ。

季節の素材を使い、その日の食材に合わせて火を入れ、切り方を決めていく。
だからこそ、少しだけ待つ。けれど、その静かな時間もまた、この店の味わいのひとつのように感じる。

ただ黙って待つ、それだけで、日常がふっと遠のいていく。

季節がしみる一皿

蓮根まんじゅう(カニあんかけ)

蓮根まんじゅうのカニあんかけ。

蓮根のほくほくとした優しさに、とろりとしたカニの旨味がふんわりと重なる。言葉より先に、安心が広がる。

鯛あら煮

鯛のあら煮は、骨のまわりまでしっかり味が入り、箸を持つ手が自然とゆっくりになる。

別紙に書かれていた「本日のおすすめ」は、ヒラメの薄造りと鱧の湯引き。皿の上に、初夏の気配がそっと降りてくるような二品だった。

口に運ぶたび、空気まで季節の色を帯びていくような気がする。

“すすめられる”という安心

冷蔵ケースに並ぶ日本酒

冷蔵ケースには、全国の銘酒が並んでいる。けれど、この店では、自分で選ばなくてもいい。

「お魚が続くので、これが合うと思いますよ」

女将がすすめてくれたのは、福島の「写楽」。すっとした飲み口、キレのある後味が、魚の甘みをぴたりと引き立ててくれる。

店内|本日の日本酒のメニュー

日本酒の銘柄よりも、会話の流れで生まれる一杯。

「どこから来はったん?」
「今日は何軒目?」

そんなやりとりの中で、自然とその日の味が決まっていく。

会話の温度もちょうどいい

店内|カウンター・掘り炬燵の座敷

カウンターの端で、常連らしき夫婦がぽつり。
「筍の土佐煮、今日はないんやね」
女将がにこっと笑って、「ちょっとだけ残ってたから、出せますよ」と返す。

その返しがなんともやさしくて、ご主人の顔もふっとほどける。

鱧の天ぷら

別の席では、「鱧、天ぷらにもできますよ」と声がかかる。
「じゃあ、そっちで」と返すお客。

注文というより、会話の中から生まれる一皿。そんな自然なやりとりが、この店にはよく似合っている。

“まかせる”という選択肢

本日のおすすめ一覧(メニュー)

『楽てん』には、決まったコースもルールもない。
その日いちばん美味しい素材を、いちばんいいかたちで。切り方ひとつ、火加減ひとつで、味も景色も変わっていく。

その判断は、すっかり任せてしまったほうが、間違いない。

お刺身盛り合わせ(一人前)

お酒も同じ。ラベルを読むより、「今夜はこんな料理が食べたい」に合わせた一本を、女将がさりげなく選んでくれる。
その選び方が、何より信頼できる。

“ただいま”でも“はじめまして”でも

楽てん|店前の様子

仕事帰りの会社員。肩肘張らずに、いつものように座るご夫婦。
この店に来る人たちは、特別な理由があるわけじゃない。ただ、ちゃんと美味しいものを、静かに楽しみたいだけ。

そんな“大人の夜”に、『楽てん』はちょうどいい。
何を食べようか迷ったら、こう言ってみてほしい。

「今日は、おまかせで」

その言葉が、いちばん贅沢な入口になるかもしれない。

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