布施駅の北側。「お食事処 大福」は、昭和23年からまちの胃袋を静かに支えてきた、町の食堂。
入り口ののれんをくぐると、ショーケース越しにだしの香りと目玉焼きの音がふわりと届く。
観光でも、話題のグルメでもない。だけど、きっと記憶に残る。そんな“ふつうのごはん”が、今日も誰かの一日を整えている。
住所 | 大阪府東大阪市長堂2-4-2GoogleMap |
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電話番号 | 06-6781-3447 |
営業時間 | 9:00~15:00, 17:00~21:00 |
定休日 | 日曜日・祝日 |
喫煙可否 | 禁煙 |
昭和の記憶が、湯気の中に
布施駅から少し歩いた、事務所と町工場が混じる通り沿いに、「お食事処 大福」はある。
朝の仕込みはまだ空が青くなる前から。音と湯気と匂いが、ゆっくりと店の隅々に広がっていく。
創業は、昭和23年。最初は近くの会社に届ける弁当屋から始まった。
いつしか、このあたりで働く人たちの朝昼晩を支える場所になっていた。
「家のごはんみたいに、くつろいで食べてほしいんです」
そう話すのは、今お店を切り盛りする吉岡さんご夫妻。
手を抜かず、飾らず。でも、丁寧。厨房からも、接客からも、そんな空気が漂ってくる。
朝9時の、やさしい定食
のれんが揺れるのは、朝9時。「朝ごはん定食」は、ごはんと味噌汁に、目玉焼きと小さな小鉢。
何気ないようで、どこかやさしい。仕事前の一服に、休日の静かな贅沢に。
この朝ごはんがあるだけで、「今日も大丈夫」と思える気がする。
どれにしようか迷う、昼のしあわせ
10時を過ぎると、店の空気が少しだけにぎやかになる。
日替わりの「おまかせ定食」は、その日その時の“昼のごちそう”。
ある日は「小エビとちくわとズッキーニの天とじ丼」。ふわりと卵でとじられた甘みが、口の中でじんわり広がる。
それはなんだか、子どものころ祖母の家で食べたお昼ごはんに、少し似ている気がした。
「豚の生姜焼き定食」は玉ねぎたっぷり、甘辛ダレが白ごはんをぐいぐい進ませる。
ミックスフライに、ハムエッグ。どれも手間を惜しまないけれど、主張しすぎない。日常のまんなかにある、“ちゃんと美味しい”たち。
ごはん大盛りは+60円、ミニうどんは+50円。財布にも、胃袋にもやさしいのが、大福流。
午後のひとときに、小さな贅沢
13時を過ぎるころ、「午後の肴」という時間がそっと始まる。
瓶ビールを頼む声とともに、マグロの造り、ししゃも、ホタテのバター焼き……。
昼の喧騒が少しだけ静まった店内で、それぞれの午後を過ごす人たちがちらほら。
声は小さくても、満たされた空気が確かに漂っている。
ひとりでも、ふたりでも。ここは、ちょっといい午後の“逃げ場所”にもなる。
もう一品の愉しみ、ショーケースの誘惑
入り口のすぐそば。ガラスのショーケースには、色とりどりの小鉢が並んでいる。
冷奴、卯の花、だし巻き卵に納豆。ごはんにも、酒の肴にも、よく合う名脇役ばかり。
器のふちには、白の値札。書かれた値段を見ながら、今日の気分にぴったりな一皿を選ぶ時間もまた、ちょっとした贅沢だ。
器の重みが心地よくて、手にした瞬間、料理の温度が伝わってくるような気がする。
まちの台所で、また一食
「お食事処 大福」には、派手さはない。だけど、変わらない温度がある。
変わらないメニュー、変わらない笑顔。そして、そのときどきで変わる、ちょっとした表情。
布施で働く人たちの「いつものごはん」。
その景色に、ふらりと混ざって、あなたも今日の一食を。そんな時間が、案外、いちばん贅沢なのかもしれません。