暖簾をくぐると、カウンター越しに優しい笑顔が迎えてくれる。
布施の下町にある「浜富寿し」は、ちょっと不思議で、あたたかい空気の漂うお寿司屋さんだ。
ジャンボサイズの寿司はもちろん驚きだけど、なぜだろう。
食べ終わった後に心がほぐれているのは。
この町の暮らしの匂いや、大将の人柄が染み込んだ、そんな店だ。
暖簾の奥の、ちょっとお茶目な寿司屋
ブランドーリ一番街を入ってすぐの路地に入るとすぐ見えてくる「浜富寿し」。
玉造で20年、そして布施で20年。
気づけば40年近く、看板を守り続けてきた浜田さんのお店だ。
のれんをくぐると、カウンターとテーブル席。
常連らしき人たちが静かに酒を飲み、寿司をつまんでいる。
奥には座席もあり、家族でも入れる。
一口じゃ収まらない、豪快さ
名物は「ジャンボすし」。
旬の魚が、どれもこれも一口では無理なサイズ感で握られている。
実は、通常サイズも大きい。はみ出すうなきゅう巻きや、脂の乗ったマグロ。
大きさだけじゃない。どれも、ちゃんと旨い。
お腹いっぱい食べて、ビールも一杯飲んで、3000円ほど。布施の日常にちょうどいい、そんな価格だ。
野茂英雄と、大将の物語
店内の壁には、写真がたくさん飾られている。
よく見ると、野茂英雄選手と肩を並べる若き日の浜田さんの姿。
聞けば、社会人野球の頃、野茂選手とバッテリーを組んでいたそうだ。
「野茂のバッテリーやってた大将の店やって」
そんな噂が広まって、客が増えたこともあった。
でも、20年変わらず賑わっている理由は、それだけじゃない。
カウンター越しの会話、寿司の味、そのすべてに大将の誠実さがにじんでいるからだ。
大きさの理由
「なんでこんなに大きいんですか?」
そう聞くと、大将は少しはにかんで「お客さんが喜んでくれるからですね」と答えた。
派手なサービス精神じゃない。
そっと誰かの一日を明るくしたい、そんな気持ちが大きさになって表れているように思う。
週に2回通う常連さんもいるという。
寿司の大きさも、大将の人柄も、現役で布施の町に元気を届けてくれる。