布施の住宅街にある、築140年以上の日本家屋。「古民家 Cafe ら・さんぶら」は、2023年に店主の実家を改装して生まれた小さなカフェ。
障子からもれるやわらかな光、静かに手入れされた庭、ほろ苦く香るコーヒーの湯気。どれも、日常のどこかに置き忘れていた“ぬくもり”のような気がして、ふうと深呼吸したくなる。
ここには、「カフェ」という言葉だけじゃ収まりきらない、暮らしの気配がある。
| 住所 | 大阪府東大阪市高井田西1-10-7GoogleMap |
|---|---|
| 電話番号 | 090-2001-4449 |
| 営業時間 | 9:00~17:00 |
| 定休日 | 月火水木 |
| 喫煙可否 | 禁煙 |
140年の記憶をまとう場所で

「ら・さんぶら」──なんとも耳に残るこの名前には、“南風”の意味が込められているらしい。風のように、そっと、あたたかく。
店主がそう語るその通りに、このカフェの空気はやわらかい。どこか懐かしくて、でも新しい。そんな不思議な居心地が漂っている。

ガラス戸越しの庭を眺めながら座れる縁側席は、いつも人気の場所。夏になれば、蝉の声が会話の間を埋めてくれるし、冬は湯呑みから立ちのぼる湯気が景色の一部になる。

足を投げ出して過ごせるローテーブルに加えて、椅子席も用意されているから、足の悪い方や小さなお子様連れでも無理なくくつろげる。
夜だけの“寺子屋”がひらくとき

毎月一度、ら・さんぶらが夜に開く「読書・勉強カフェ」。照明は少し落とし気味で、話し声はささやき程度。静かな夜に、それぞれの“今”に向き合う時間が流れていく。

玄関を入ってすぐの木の階段を、きしむ音を立てながらのぼると、ふと、昔の寺子屋って、こんな感じだったのかもしれないと思う。
本を読む人、ノートを広げる人、それをただ見守る店主のまなざし。元・保育士だったという彼女の言葉やしぐさには、安心をくれる何かがある。
カフェというより、地域の“みんなの居場所”。帰ってきたくなる理由が、ここにはたくさんある。
濃厚だけど、重たくない。あのケーキの話

「ベイクドチーズケーキをください」初めて訪れた人が、そう頼む確率は、きっと高い。それほどに、このケーキはら・さんぶらの顔になっている。
濃厚なチーズと、ざくっと香ばしいタルト。甘さは控えめだけど、満足感はしっかりある。ゆっくりとフォークを運びながら、気がつくと会話のテンポまでゆるやかになる。そんな一皿。

アイスコーヒーは、水出し。スッキリした口当たりが、チーズケーキとの相性を引き立ててくれる。ひと口、またひと口と、ゆっくり味わいたくなる組み合わせだ。
甘さと苦さのちょうどいい距離感

パフェなんてしばらく食べてないなあ、と思いながら頼んだ「コーヒーゼリーパフェ」。これが、意外とハマる。
ほろ苦くてなめらかなコーヒーゼリーに、たっぷりのバニラアイス。ガラスの器の中で、甘さと苦味がゆっくりと混ざり合っていく。「大人のスイーツ」という言葉が、ぴたりとくる。
一口目のインパクトというより、最後の一口まで飽きさせない余韻。店主の“おやつのセンス”、なかなか侮れない。
朝にふさわしい、やさしい始まり
朝9時のら・さんぶら。少し眠そうなまなざしと、湯気たつコーヒーの香り。静かな庭を眺めながら食べるモーニングは、まるで小さなご褒美みたいだ。

ピザトーストは、ちょっと懐かしい味。ウインナーにピーマン、玉ねぎ、そしてチーズ。トースターから出したてのパンが、カリッと音を立てる。
そこに添えられたミニサラダも、ひと手間かけた感じがうれしい。

サンドイッチセットもおすすめのひと皿。たまごと、ハム&きゅうり。ほんのりきいたからしが、大人の味に仕上げてくれている。
ブレンド、カフェオレ、オレンジジュース。どれを合わせても、朝にちょうどいい。
名前を呼ばれた気がする午後に

喫茶店でも、図書館でも、友だちの家でもない。でもなぜか、自分の名前を呼ばれたような気がして、ふっと足を止めたくなる。
「古民家 Cafe ら・さんぶら」には、そんな空気が流れている。

築140年の木造家屋に、南風のようなやさしさがそっと吹く。忙しさのすきまに、ぽつんと空いた静けさ。
その時間に、身をゆだねてみるのも悪くない。
布施を歩く日があれば、角をひとつ曲がって──ら・さんぶらで、気持ちをほどく時間を味わってみてください。