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布施のおすすめスポット

湯呑みのなかに、まちのやさしさ。【お茶の千宗|お茶屋】

本町通のアーケードを抜けた先、四条通りの入り口にぽつんと佇む「お茶の千宗」。
ただの“お茶屋さん”じゃない。湯気といっしょに、声とぬくもりが立ちのぼる場所。
冷たい鳩麦茶も、あったかい宇治茶も、どれも“ちょっと寄ってこか”にぴったりだ。
急須のそばには、日常があって、おしゃべりがあって、やさしい時間がある。

スポット情報
お茶の千宗
住所 大阪府東大阪市足代南1-2-4GoogleMap
営業時間 10:00~17:00
定休日 なし

ふだん着の宇治茶屋

にぎやかな布施駅前から少しだけ歩くと、空気がすっとやわらぐ。
その先に、ふわりと現れる「お茶の千宗」。
大阪・松原市に本社を構える「宇治森徳」の直営店で、創業は1957年(昭和32年)。
全国に卸すなかで、実店舗があるのは、ここ布施だけ。

看板には、まんまる顔の「かおりちゃん」。
布施の人にはおなじみのキャラクターで、子どものころの記憶とつながっている人も多いらしい。
この場所が“選ばれた”というより、“根づいた”感じがあるのが、なんともいい。

湯気のむこうに、おしゃべりがある

「ちょっと飲んでいき〜」
迷っていると、店のお母さんが声をかけてくれる。
差し出されたのは、冷たい鳩麦茶。
「キンキンじゃないけどね」
なんて笑いながら、もう一杯は温かいのを淹れてくれる。

奥から急須を出して、お湯を沸かして、湯呑みを次々にあたためる。たったひとりのために、そんな丁寧な所作を重ねてくれるのが、うれしい。音もなくお茶が注がれる、その一瞬さえ美しく感じるのは、おそらく気のせいじゃない。

お茶は、ひとりで飲まないものかもしれない

「それ、おいしそうやな。ちょっともらおか」
常連のおばちゃんが、いつの間にか隣に座っていて、さらりと湯呑みを手に取る。

「これ、もう一回出るで」
「出涸らしは乾かして、ふりかけにするんや」
お茶にまつわる知恵と、生活のアイデアがぽんぽん飛び出してくる。お茶をきっかけに、自然と話が広がって、空気がゆるんでいく。

ここは“売る場所”というより、“話す場所”。
買い物のつもりが、いつの間にか寄り道になってる。そんな時間の流れ方が、ちょっといい。

おみやげに、まちの味を

帰り際にすすめられたのは、「梅こぶ茶」。とろりとした昆布の旨みに、ほのかな梅の香り。実は、布施のバー「BarRackSprits」でも、“締めの一杯”として人気らしい。

「料理にも使えるし、あると便利やで」
そのひとことに、なんとなく背中を押されて、手が伸びる。気づけば、ちゃんと“布施っぽい”手土産になっていた。

おしゃべりと急須と、かわらないもの

「これ、仕事やって思ってへんねん。ただおしゃべりしてるだけ」そんなふうに言って、お母さんはもう一杯をそっと差し出す。

急須の中でふくらむ茶葉のように、まだまだこの場所には語られていない日常が詰まっている。ふらっと立ち寄って、すこし話して、気づけば心がゆるんでいる。

ここで出会った言葉や味が、帰り道のポケットの中でじんわり残ってる。また来たくなるのは、たぶん、そのせいかもしれない。

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