FEATURED SPOT おすすめスポット紹介
布施のおすすめスポット

布施で一番、やわらぐ珈琲。【喫茶トトロ|喫茶店】

アーケードの喧騒から、ほんの一歩だけ外れた東一条通り。
路地の奥で見つけた「珈琲専科トトロ」は、まるで布施の朝の秘密基地。
下は「喫茶・軽食トトロ」、上は「珈琲専科トトロ」。
名前が二つあるこの喫茶店には、チェーンでは出せない、やわらかな暮らしの気配が漂っていました。
モーニングの卵、湯気とともに漂うコーヒーの香り、気さくなママの一言。
ここで過ごす時間は、急がない朝の手ざわりを、もう一度思い出させてくれます。

スポット情報
喫茶トトロ
住所 大阪府東大阪市足代2-1-20 永伸ビルGoogleMap
営業時間 7:00~18:00
定休日 なし(不定休で月に2~3日)
喫煙可否 喫煙可能

朝の喫茶店に、灯る声

「おひとり? カウンター、どうぞ」 まだ身体が目覚めきらない朝の時間に、そんな声で迎えられると、ふっと緊張がほどける。

カウンターには新聞をめくる常連の男性。テーブル席では、ご婦人たちがサンドウィッチを半分こ。会話は多くないけれど、空気に馴染んでいる。

トーストの香ばしい匂い、こぼれる湯気、やわらかい光。それらがゆっくりと体の芯にしみ込んでくる感じがする。

焦げ茶のソファ、使い込まれて馴染んだ黒いテーブル。壁際の花瓶や古い雑誌、そしてカウンター奥の棚にぎっしりと並ぶカップたち。どれも少しずつ時間に磨かれて、ちょうどいい“くたびれ感”。10畳ほどの店内には、飾らない生活の美しさがそのまま息づいている。

「布施一の味」かもしれない

「布施で一番の珈琲が飲めるお店」

入り口にそう書かれた小さな看板。たぶん、誰かが言ったのをそのまま掲げたのだろう。根拠なんてなくてもいい。

注文を受けてから、丁寧に一杯ずつドリップするママの姿。銀のポットから、トロリトロリと注がれるお湯の音。漂ってくる香りと、その動きに、つい見とれてしまう。

味の優劣なんかじゃなくて。“ちゃんと丁寧に向き合ってもらえる”という、気持ちの部分での満足。ここで飲む一杯は、どこか“心をほどくお守り”みたいな存在だった。

モーニングは、やさしい生活の縮図

この日のモーニングは、たまごサンドとフルーツ、半熟のゆで卵。「今日はこれね」と笑って渡されるトレイには、過不足のない朝が詰まっていた。

毎日メニューは少しずつ違う。サンドウィッチ、ホットサンド、ハムトースト、フレンチトースト……。曜日ごとの“いつもの味”を、楽しみにしている人がいる。

「一人やと材料が余るでしょ?」そんな理由が、ちゃんと町のリズムに馴染んでいる。

常連さんたちは、それを楽しみに通ってくる。“食べる”こと以上に、“今日も変わらずそこにある”ことが、きっと嬉しいのだ。

会話、栄養、安心感。この店のモーニングには、暮らしに必要なものが、さりげなくそろっていた。

「毎日、開けてるんですか?」

モーニングのメニューがずらっと曜日ごとに書かれたボード。月火水木金土日。あれ、定休日がない。

「たまに2〜3回休むけど、基本はね。締めちゃうと、“今日行くとこないやん”って言われるのよ」

ママが、笑いながらそう言った。

それは、ちょっと泣きたくなるくらいあたたかい言葉だった。誰かの「居場所」になることの責任を、軽やかに受け止めている。

「お店を開ける」ということが、このまちにとって、どれだけ意味のあることなのか。ママはきっと、それを肌で知っている。

昼は、懐かしい味に会える

ゆっくりと朝が終わり、やがてお昼のにおいが漂い始める。今日はオムライスの気分。厨房からは、パチパチと油の音が聞こえる。

運ばれてきたのは、少し破れた薄焼き卵がのった、どこか懐かしい一皿。ご飯は冷凍かもしれない。卵も形は不揃い。でも、それがいい。むしろ、そうであってほしいと思うくらい。

カレーライス、スパゲティ、サンドウィッチ──派手な料理ではないけれど、「帰ってきた」と思わせてくれる味ばかり。まるで田舎のおばあちゃんの家にいるみたいな、そんな安心感がここにはある。

フレンチトーストに会いにいく朝

メニュー表から、明日は大好物の「フレンチトースト」であることに気づく。はやる気持ちを抑えて「11時でも間に合いますか?」と尋ねると、

「少し遅れても作ってあげるよ」と微笑むママ。

その一言が、なんだかすごく嬉しくて、心がふっと軽くなる。ほんの小さな気づかいが、その日一日の表情を変えてしまうことってある。

だから私は、「明日は早起きしよう」と思えた。こんなふうに思わせてくれる喫茶店は、そう多くない。

一杯に込められた、見守るような優しさ

「布施で一番の珈琲が飲めるお店」
その言葉の奥には、競争心ではなく、“ここがあれば大丈夫”という、町との静かな約束がある気がする。

きっとこの店は、今日も誰かの日常をやさしく受け止めている。香りと温度と、さりげない会話で、焦る気持ちをほどいてくれている。

珈琲の香りに包まれながら、ただ気持ちがやわらいでいく。そんな時間が、この店にはある。

このスポットへのアクセスACCESS