布施の夜、雑居ビルの1階で黄色い旗が呼んでいる。深夜3時半まで開いている「にんにくラーメン44」。強面の店主が問いかける。「にんにく、入れますか?」。——明日は休み。匂いなんて気にしない。えいっと面をすすると、熱と匂いと旨みが一気に押し寄せる。背徳感すらごちそうに変えてくれる、最後の贅沢。
| 住所 | 大阪府東大阪市足代北2-1-7 布施セントラルビル 1階GoogleMap |
|---|---|
| 電話番号 | 06-6753-8144 |
| 営業時間 | 20:00~3:30 |
| 定休日 | 不定休 |
| 喫煙可否 | 禁煙 |
雑居ビルの手前に、光る看板

布施駅の北口。深夜を過ぎ、人通りがまばらになったスナック街。スナックがひしめく雑居ビルの手前に、電光の看板が光っている。「にんにくラーメン44」と書かれた文字が目に飛び込んでくる。

見つけた瞬間、「ああ、今日はここで終わろう」と決めてしまう。営業時間は夜8時から翌朝3時半まで。つまりこの店は、夜のためだけに存在している。
「にんにく入れますか?」で解放される

店内はカウンター6席とテーブルがひとつ。木目調の壁が落ち着いているのに、漂う空気は容赦ない。席に着いて食券を置いた瞬間、店主がこちらを見て言う。
「にんにく、入れますか?」——これはもう儀式だと思う。
「はい、多めで」と答えたときにわずかに残る罪悪感も、にんにくの山を目にした瞬間に吹き飛ぶ。あの刻みにんにくの盛りは、欲望が形になったものだ。
厳つい顔に、誠実な手つき
厨房には、店主がひとり。寡黙に、淡々とラーメンと向き合っている。その姿はどこか無骨で、余計な飾り気がない。
スープを注ぐ音、麺を整える仕草、チャーシューを置く角度。どれも雑じゃない。
言葉が少なくても、その所作のひとつひとつから、丁寧な気配が伝わってくる。盛りつけは飾らず、ただまっすぐ。丼の中に、誠実さが静かに宿っている。
軽やかに見えて、しっかり濃い

ラーメンは「醤油」「味噌」「辛味噌」の三種類。すべて豚骨と鶏ガラのWスープを土台にしている。
特に醤油は、サラッとした見た目に反して旨みがガツンと来る。ライト豚骨と呼ぶには芯が強すぎる。飲み干した後に「やられた」と思うけど、不思議と重くない。

麺は平打ちストレート。噛むと「ぐっ」と手応えが返ってきて、眠気も酔いも引き戻す。深夜に食べたいのは、まさにこの強さだ。
贅沢すぎる“締め”

分厚いバラチャーシューが4枚。脂はとろけ、赤身はしっかり歯ごたえを残す。さらに半熟卵。黄身を割ればとろりとスープに広がり、味にもうひとつ層が生まれる。
ただの酔い覚ましにしては、手が込みすぎている。この店のラーメンは、“締め”じゃなく“目的地”なのだ。
明日を忘れる自由

にんにくの匂いを気にしていたら、そもそもここには来ない。明日の予定も、周りの目も、一瞬忘れる。熱いスープをすすりながら「まあ、いいか」と笑ってしまう。その瞬間、夜に対して正直になれる。
「にんにくラーメン44」で食べる一杯は、理性を外すためのご褒美だ。後先を考えず、ただ欲望に従う。潔さの中にある贅沢。
にんにくが灯す“えいっ”の衝動

布施の深夜、また誰かが扉を開ける。「にんにく、入れますか?」その問いに「はい」と答えるのは、覚悟でも勇気でもなく、ただの衝動だ。
——明日は休み。だから、えいっと食べる。その勢いを肯定してくれるのが、この一杯の存在意義だと思う。