駅から少し歩いた場所にある「白い熟成とんかつ 花ひらく」。
130度の油の中で、静かに火が入る白いカツ。その横では、小さな釜が息をするみたいに湯気をまとっている。注文が入ってから30分かけて炊かれるご飯は、真っ白で、やさしい甘さ。
揚げたての衣に箸を入れ、湯気の立つごはんを頬張ると、ふっと肩の力が抜ける。
| 住所 | 大阪府東大阪市足代新町4−12 テレビル 1FGoogleMap |
|---|---|
| 電話番号 | 06-7504-8056 |
| 営業時間 | 昼 11:00-15:00 夜 17:30-21:00 |
| 定休日 | 不定休 |
変わらない通りに、少しだけ特別な白

駅から少し歩いた先、「白い熟成とんかつ 花ひらく」の暖簾がゆっくり揺れる。
揚げ物といえば「きつね色」が常識だと思っていた。でも、この店では違う。店名の通り、油の中を泳ぐとんかつは白いまま火が入っていく。

白さの理由は、「温度」と「パン粉」。
一般的な揚げ温度より低い130℃で、じっくりゆっくり揚げる。
衣に使うのは、特注の低糖質生パン粉。そのパン粉が余計な香ばしさをまとわず、肉が持つ香りや甘みをそのまま閉じ込めてくれる。
豚肉は、純粋黄金豚、贅豚、TOKYO X、天元豚など、店主が惚れ込んだ銘柄ばかり。どの豚にも、それぞれの時間と風土がある。それを丁寧に熟成させ、脂の旨みを引き出している。
炊きたての白、ごちそうの白

注文が通ると、店主がそっと小さな釜を手に取る。30分かけて炊きあげるご飯は、この店のもうひとつの看板だと思う。
ふつふつと湯気が立ちのぼる音は、揚げ物のリズムとはまた違って柔らかい。炊き上がった瞬間の蓋を開ける瞬間が、なんだかワクワクする。ツヤツヤとしたお米を茶碗によそうたび、湯気に混じって甘い匂いが漂う。
ソースではなく、“寄り添う味”

この店の楽しみは、カツだけじゃない。
定番のとんかつソース以外にも、藻塩、赤柚子胡椒、わさびの醤油漬け。どれも主役を奪わない。むしろ、そっと寄り添ってくれる。
その日の気分で、合わせ方を変える常連も多い。「今日は赤柚子胡椒の気分やな」「いや、ピリッとわさびやろ」。そんなやりとりも、ここの“味”のひとつだと思う。
昼の顔、夜の顔

夜だけでなく、昼の顔もある。「花ひらく」のランチは、少し贅沢な日常のごほうびだ。
ハンバーグは、箸を入れると肉汁があふれる。その上には、ミニメンチカツがちょこんと乗っている。見た目はかわいらしいけれど、味は本格派。

生姜焼きは、注文を受けてからブロック肉を専用機械で一枚ずつスライス。フライパンの上で香ばしい音を立てながら、あっという間にまちの昼を支配してしまう。
昼も夜も、ここでは“手を抜かない”が当たり前。でも、その“当たり前”が、いちばん難しい。
このまちに、白い灯りを

布施の通りには、今日も人の気配が絶えない。買い物帰りの人、仕事帰りの人、それぞれの一日が、油の香りと混じり合っていく。
「花ひらく」の白いカツは、誰かの“がんばった日”に寄り添うような存在だ。