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布施のおすすめスポット

クレープの向こうに、あの頃の布施が見える。【ワゴンボーイ|クレープ屋】

布施駅高架下のポッポアベニューに、小さなクレープ屋がある。黄色い壁と、53種のメニューが目印。「ワゴンボーイ」は、昭和55年にニチイ布施ショッピングセンター前でスタートした老舗。

かつて学生だった大人たちが、今も足を運ぶ理由は、ボリュームや味だけじゃない。
分厚くて、もちもちの皮。こっそり中から見えるマジックミラー。ちょっと無愛想で、でも優しいあの店主。

44年続く(2025年現在)味と空気が、クレープの中にちゃんと息づいている。

スポット情報
ワゴンボーイ
住所 大阪府東大阪市長堂3-1-5GoogleMap
電話番号 080-5707-0294
営業時間 12:00~18:00(材料がなくなり次第終了)
定休日 火曜日

いつも、そこにあったような屋台

昭和55年。ニチイ布施ショッピングセンターの入口に、ぽつんと現れたクレープの屋台。名前は「ワゴンボーイ」。派手な宣伝もなければ、特別な場所でもなかった。でも、部活帰りの高校生や、親のお買い物についてきた子どもたちにとっては、ちょっとしたご褒美だった。

生地の甘い匂いが漂ってくると、つい財布の中身を確認してしまう。あの頃の200円ちょっとで買えた幸せは、今も記憶の中でやけに鮮明だ。

時が経ち、ニチイは布施サティになり、やがて閉館。そのタイミングで、ワゴンボーイは駅の高架下へと場所を移した。でも、あの頃と同じ空気を引き連れたまま。

見た目にだまされるな、このクレープは重たい

一見すると、街中にある普通のクレープ屋。でも、注文して手渡された瞬間、その存在感にびっくりする。

「チョコいちご生」「チョコバナナ生」などのスイーツ系は、皮の内側にもチョコソースがたっぷり。クリームは上から下までぎっしり。重さを測ったら300gを超えるとか。下手なハンバーガーよりも満足感がある。

皮はその場で焼かれるから、ほんのり甘く、厚みもしっかり。もっちり、しっとり、ふわっと、三拍子がちゃんと共存している。口に入れた瞬間、なんだか静かに笑ってしまう。これは、ちゃんと「おやつ」で、「ごはん」だ。

惣菜クレープという選択肢

甘いものが苦手でも、大丈夫。ここでは「ハムツナコーンサラダ」みたいな惣菜系も人気。たっぷりの具材が包まれていて、これ一つでしっかり一食になるくらいのボリューム感。

クレープ=スイーツの先入観を、いい意味で裏切ってくれる。ちょっと疲れた日の昼ごはんにも、コンビニよりワゴンボーイがしっくりくる。

黄色い壁と、マジックミラーの小ネタ

店先に立つと、まず圧倒されるのが黄色い壁にずらっと並ぶ53種のメニュー。決めきれなくて、つい立ち止まって悩む。その時間さえも、ちょっとした儀式のようで、悪くない。

でも、気をつけて。実はその壁、マジックミラーになっていて、中からはこちらの様子が丸見えだ。恥ずかしいけど、なんだかその仕掛けも含めてワゴンボーイらしい。

注文を受けてすぐに焼き始めるための工夫。合理的だけど、ちょっとお茶目なアイデア。そんな小さな驚きが、通いたくなる理由のひとつになっている。

「はいよ」だけで伝わる優しさ

クレープを作る店主

そして、忘れてはいけないのが、名物の店主。口数は少ないし、ちょっと無愛想。でも、それは職人気質の証でもある。
「すぐ食べる?持って帰る?」と聞かれて、「今、食べます」と答えると、ピンクの包装紙にくるんでくれる。持ち帰りなら、きっちり封をしてくれる。寡黙だけど、細かいところにはちゃんと気が利いている。そんな人って、案外多くはない。

クレープ片手に、布施の空気をもう一度

イートインスペースは今はお休み中。でもそれがかえって良かったりする。クレープを片手に、昔ながらの布施の商店街をぶらりと歩いてみる。

立ち止まるたびに、違う景色が見えてくる。駄菓子屋の看板、閉店した本屋のシャッター、自転車を停め井戸端会議をするおばちゃんら。いつのまにか、自分もこの町の風景の一部になっている気がしてくる。

ワゴンボーイのクレープは、ただの食べ物じゃない。あの頃の時間と、今の自分が、ひとくちの中でそっと再会する。
きっと今日も、誰かがあの黄色い壁の前で、ちょっと悩んで、そしてちょっとだけ笑っている。

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