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布施のおすすめスポット

「百名店の黒」その一杯に、また会いたくなる。【細見商店|ラーメン】

駅から少し歩いたところにある、さりげない佇まい。
「細見商店」は、東大阪・布施のラーメン屋。けれど、ただのラーメン屋ではない。

スープの奥に感じる、店主の故郷のぬくもり。
ふわりと香る柚子皮や、もちっとした太麺。

一杯すすれば、体が少しずつゆるむのがわかる。
ここでしか味わえない、濃厚でまろやかな“麦味噌”がある。

百名店という肩書きより、もっと手前のところで、人はこの店に恋をする。

スポット情報
布施 細見商店
住所 大阪府東大阪市足代新町8-2GoogleMap
営業時間 11:00-15:00、18:00-21:00(日曜日のみ 11:00-15:00)
定休日 月曜日

駅から歩いて、記憶のほうへ

細見商店|外観

近鉄布施駅の改札を抜け、商店街をぬけると、ぽつんと「細見商店」の看板が現れる。
特別派手でもなく、かといって地味でもない、町に馴染んだその佇まいは、ちょっと見逃しそうになるくらい自然体だ。
でも、ドアを開けた瞬間、空気が変わる。

厨房からはスープの香り。カウンター越しに飛び交う、短い会話と、湯気。
この町で暮らす人たちの、昼休みの景色がそこにあった。

麦味噌の記憶が、スープになる

金の麦味噌ラーメン(950円)

細見商店の「金の麦味噌ラーメン」。
その名前を聞いた瞬間に、口の中にほのかな甘みが蘇る。

使われているのは、店主の故郷・愛媛でつくられた麦味噌。
鶏と豚骨をベースにしたスープに合わさると、どこか懐かしい、けれど芯のある一杯が生まれる。

金の麦味噌ラーメン|スープ

味噌の甘さがただのコクで終わらず、時間をかけて溶けていく。
その途中で、刻んだ玉ねぎがサクッと現れて、ほんのり苦いアクセント。
そして、厚切りの三元豚チャーシューは、まるでごちそうみたいに存在感を放っている。

布施ブラック、知る人ぞ知る裏の顔

「金の麦味噌ラーメン」の影に隠れたもうひとつの主役、それが「布施ブラック」。

どんぶりを覗けば、スープは黒々と深い。けれど、口にすると拍子抜けするほど澄んでいる。
鶏ガラに魚介の出汁をあわせたその一杯は、重たくなく、するすると喉をすべる。
柚子皮がふわりと香るたび、あの店の空気をまた思い出してしまう。

“黒いのに軽やか”なんて、ちょっとずるい。

麺は、京都の老舗から

「麺屋棣鄂(ていがく)」の角形ストレート太麺

細見商店で使われているのは、京都の「麺屋棣鄂(ていがく)」の角形ストレート太麺。
モチモチとしたコシ、スープに負けない存在感。
見た目は無骨、でもスープとの相性はとことん緻密。

「麺屋棣鄂(ていがく)」の角形ストレート太麺(アップ)

すするたびに、スープと麺が寄り添ってくる感じが心地いい。
この「ちょうどよさ」が、食べ終わった後の満足感をつくっているのかもしれない。

気持ちのいい店って、こういうこと

細見商店のスタッフさんの様子

若いスタッフが中心の店内。
カウンターの中では、軽口を交わしながらも、無駄のない動き。
挨拶も返事も、変にかしこまっていないのに、きちんと気持ちが伝わる。
食べ終わった頃には、なんとなくこっちまで背筋が伸びている気がする。

ラーメンの味だけじゃない。空気ごと、好きになってしまう。

変わらないことの、強さ

食べログ百名店2023/2024のシール

この店が「食べログ ラーメン OSAKA 百名店」に2年連続で選ばれている理由は、たぶんスペックじゃない。
濃厚な味噌も、真っ黒なスープも、京都の麺も、もちろんすごい。
でも一番は、「変わらずそこにある」という事実そのものだと思う。

日常のなかのごちそう。ちょっと頑張った日のご褒美。
何気ない日の、心の拠りどころ。
それがラーメンという形になって、この店に並んでいるだけ。

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たぶんまた行くだろうな、と思える店って、意外と少ない。
味だけじゃなくて、空気とか、温度とか、記憶に残るものがあるから。
「細見商店」は、そんな一軒だ。

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