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布施のおすすめスポット

魚屋の声が聞こえる、まちのスーパー。【万代 布施店|スーパーマーケット】

旅の途中、ふと入ったスーパーが、その土地の“素顔”だったりすることがある。観光地じゃない、日常のどまんなか。東大阪・布施にある「万代布施店」も、まさにそんな場所だ。食品館・酒館・日用品館に分かれたちょっと不思議な構造。だけど、それもこの町の風景にちゃんと馴染んでいる。惣菜の香りに誘われ、鮮魚コーナーで兄ちゃんと喋りこみ、気づけば生活の中に溶け込んでいる自分がいる。ここには、“買い物”以上のものがある。

スポット情報
万代 布施店
住所 大阪府東大阪市足代南1-1-2GoogleMap
電話番号 06-6721-8773
営業時間 9:00~21:00

布施からはじまった物語

看板には、白地に水色で「万代(mandai)」。関西の町なら、どこかで一度は目にしたことがあると思う。でも、そのルーツが東大阪・布施にあると知る人は、案外少ないかもしれない。

はじまりは、1949年。石鹸の製造販売からスタートした「万代油脂工業」。やがて食品へと舵を切り、1966年にこの布施店が生まれた。

時代は変わっても、布施店はどこか昔の空気をまとったまま、町と一緒に呼吸している。外観はきれいに改装されても、残るのは生活に溶け込むような存在感。

きっとこれは、地域に根を張ってきた証。どこか懐かしくて、でもちゃんと“今”を生きている。

「バラバラ」って、悪くない

万代布施店は、少し風変わりなつくりをしている。食品館、酒館、日用品館。三つの建物が、道を挟んで点在している。

「ひとつにまとまっていない」ことが、逆に、この町には合っている。すぐ近くには、今もにぎわう商店街。八百屋、精肉店、金物屋……それぞれが、それぞれの役割を黙々と果たしている。暮らしを部品に分けたような風景。でも、その全体で、ちゃんと“まち”になる。

だから万代も、わざとバラバラのままでいるのかもしれない。三つの館をまたぐたび、売り場の空気が少しずつ変わっていく。それがちょっとした散歩みたいで、意外と楽しい。

魚を選ぶと、会話がはじまる

食品館に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが、鮮魚コーナー。東大阪の鮮魚センターから毎朝届く魚が、氷の上にずらりと並ぶ。

「これ、焼く?煮る?」「塩ふって、グリルでいけるよ」
そんなふうに、売り場の人がふっと声をかけてくれる。注文すれば、その場で捌いてくれるし、料理のコツまで教えてくれる。

 

ただ魚を“買う”だけじゃない。魚屋みたいな、いや、もう少し近い感じ。やりとりがあるって、なんだか嬉しい。忙しい日のなかに、ふとあたたかさが差し込む。

「今日はもう、作りたくない」日の味方

夕方になると、惣菜コーナーの前に人が集まりはじめる。揚げたてのコロッケ。出汁が効いた玉子焼き。唐揚げは、衣が香ばしくて中はジューシー。どれも、どこかで食べたことがあるような、でもちゃんと「うまい」と思える味。

奈良・斑鳩の惣菜センターから、毎日できたてが届く。

「今日はもう、台所に立ちたくない」そんな日も、ここに来れば、あと一品が見つかる。つい手が伸びてしまうのは、どれも“ちゃんとおいしい”から。気づけば選んでいる。そんな味。

手抜きじゃなく、ちゃんとした“選択肢”としての惣菜。そのスタンスが、なんだか気持ちいい。

暮らしの音がするスーパー

日用品館では、おばちゃんたちが洗剤の成分表示をじっと見比べている。酒館では、おじいちゃんが焼酎の銘柄を前に小さくうなずいている。食品館の入り口では、学校帰りの子どもたちが100円玉を握って、今日のおやつを選んでいる。

この風景は、どこかで見たようで、でもちゃんと「布施のまち」そのものだ。観光地の華やかさはないけれど、ふつうの生活が、静かに息づいている。

「スーパーなんて、どこにでもある」たしかにそうかもしれない。でも、ここにはこの場所にしかない時間の流れがある。

その町を知るには、スーパーを見ればいい

旅先でスーパーに寄るのが、ちょっと好きだ。その土地の人が何を食べて、どんなふうに暮らしているのかが、棚に並んだ商品から透けて見える気がするから。

布施の万代も、そんな場所だった。暮らしのリズムがそのまま流れていて、観光でも特別でもないけれど、心に残る何かがある。

布施のまちを歩いたなら、少しだけ寄り道してみてほしい。三つの館をまたいで、町の空気を吸いながら、今日の夕飯を考えるのも悪くない。

それだけで、なんだかこの町に少しだけ近づけた気がするから。

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