布施の街角で、ふと肩の力が抜けるような店に出会った。
暖簾をくぐると、カウンターの向こうで大将が笑っていて、客も笑っていて、まるでお寿司屋さんとは思えない光景。
昭和33年から続く「まつばすし」は、寿司を握るだけじゃない。
人と人の間に、小さな物語をほどいてくれる場所だった。
瓶ビールとおまかせ握り、それだけなのに、今日という一日を気分よく終えられる。
| 住所 | 大阪府東大阪市足代南1-16-7GoogleMap |
|---|---|
| 電話番号 | 06-6728-0333 |
| 営業時間 | 16:30~22:00 |
| 定休日 | 木曜日 |
| 喫煙可否 | 禁煙 |
| SEKAI PASS特典 | はじめの1杯サービス(ディナーのみ) |
寿司のある日常、ここから始まった

布施にある「まつばすし」は、創業70年。まっすぐな寿司を握り続けてきたこの店には、観光名所のような派手さはない。寿司屋なのに毎日通いたくなる、そんな引力がある。
「ウチは昔から、“見た目”より“味”やねん」そう笑うのは、二代目の大将。
SNSで映える寿司が増えている今も、ここでは“胃袋を掴む味”が最優先。言葉の端々に、寿司と客へのまっすぐな想いがにじんでいた。
自家製だれに宿る、変わらない想い

この店には、大切に守られてきた味がある。
たとえば、ネタごとに変える自家製のタレ。「漬けマグロ」にはコクを、「アジの炙り」には香ばしさを。既製品を使わないのは、万が一それが手に入らなくなった時に、お客さんの“好きだった味”を守れなくなるからだという。
「うちの味を、ちゃんと続けたいんです」誰にも言われてないけど、誰かのためにこだわり続ける。そういう姿勢が、親子三代に渡って通う常連客たちの足を、自然とこの店へ向けさせているのかもしれない。
「おまかせ握り」と瓶ビール、夜に寄り添う定食

カウンターに座って、「おまかせ握り」を頼む。8カンで2,350円(日によって変動有)。定番ネタに季節ものがちらり。大将のその日の気分も少しだけ混じっているかもしれない。それに瓶ビールを添えれば、静かなごちそうの完成だ。
冷たいグラスに注いだ泡をひと口。にぎりを一貫、口に運ぶ。「うまいなあ」って、誰にでもなくつぶやきたくなる夜。
おしゃれな演出はいらない。ただ、おいしいってことがちゃんと伝わってくる。そんな晩ごはんも、悪くない。
ルールはひとつ、「他のお客さんを気遣うこと」

まつばすしには、特別なルールはない。あるとすれば、「他のお客さんのことを気遣う」こと。それだけ。
一人で静かに寿司を楽しむ人。大将と冗談を交わしながら飲む人。カップルでにぎやかに食べる人。
誰もが自分のペースで過ごしていて、でもどこか、まわりを見ている。たとえば満席のとき、常連客がすっと席を立って「俺、もう出るわ!」と言って譲ることもある。そんな粋なやさしさが、この店には自然に息づいている。
看板が守り続けられる理由

70年という時間の中で、変わったこともあるだろう。でも、この店の芯みたいなところは、ずっと変わっていないように思えた。
「味」にこだわる姿勢。た「誰かのために」という気持ち。それは、きっとこの町の空気にもしっかり根を張っている。
お寿司屋さんというより、「ただいま」って言いたくなるような場所。初めてなのに懐かしくて、背筋をしゃんとさせられるような、そんな夜だった。