布施駅を出てすぐの通りで、ちょっと背筋が伸びるような風格のある外観に出会ったら、それが「洋食の店 紀の国屋」。
戦後すぐの創業から70年以上、家族三代で受け継がれてきた洋食屋は、懐かしいのに新しい。お皿の上にあるのは、流行りではなく、ずっとそこにある暮らしの味。
クリームじゃない、でもなぜかとろける「えびコロッケ」を頬張れば、きっとあなたの中にも何かがふっとほどけるはず。
| 住所 | 大阪府東大阪市足代1-12-5GoogleMap |
|---|---|
| 電話番号 | 06-6721-3069 |
| 営業時間 | 11:00〜15:00(L.O. 14:30) 17:00〜20:00(L.O. 19:30) |
| 定休日 | 月曜日・第2、第3火曜日 |
| 喫煙可否 | 禁煙 |
きっかけは、あの通りの角から

布施駅西南出口を出て、1分ほど。ふだんの通勤や買い物のルートに、ふっと現れる一軒の店。
タイル貼りの壁に、手書きのような柔らかい書体の看板。「洋食の店 紀の国屋」と書かれている。

どこか背筋が伸びるのは、創業1947年の風格かもしれない。けれど、扉を開けると拍子抜けするくらい居心地がいい。明るくて、モダンで、ほっとする。
一人でも、大丈夫。むしろ一人で来るのが似合う空気。
思いつきから生まれた、ここにしかないひと皿

思わず目を引く、ぽってりと愛嬌のあるフォルム。エビフライじゃなくて、えびコロッケ。だけど、ちゃんと尻尾はついている。

このメニュー、実は2代目のお母さんが、昔、スタッフ同士で思いついたものなんだそう。えびのすり身じゃなくて、ちゃんと一尾のえびを、クリーミーなじゃがいもで包む。
そこに、代々継ぎ足してきたトマト系デミグラスソースをかけると、思わず、ご飯をかきこみたくなるような一体感が生まれる。
白ごはんが主役になれる洋食

「洋食って、ライスなんですね。」
そう言うと、店主は笑って「そうですよ、うちは定食ですから」と答えてくれた。パンとスープじゃなくて、白ごはんと味噌汁。炊飯にも調理にも、アルカリイオン水を使っているそうで、お米もお肉も、ふっくら甘い。
たとえば、ハンバーグ。ぎゅっと詰まった肉の旨みに、じゅわっと染みるソース。一口で、ご飯が三口いけるやつだ。
山形豚を使った「トンテキ」や「ヘレかつ」も、その例外ではない。満腹の手前で、「また来ようかな」とふと思うのは、きっと満たされた証拠。
地元の店、だけど“わざわざ”が似合う

常連さんがふらっと暖簾をくぐる一方で、「えびコロッケを食べに来たくて」と、遠くから泊まりがけでやってくる人もいるらしい。
その話を聞いても、不思議と頷けてしまう。どこか懐かしいのに、新しい。初めてなのに、前にも来たような気がする。そんな味が、ここにはある。
今日も誰かが、楽しみにしている
好きなものを、ちゃんと好きと言える場所。ふらっと立ち寄って、ご飯をもりもり食べられる時間。そんなあたりまえが、ここではちょっと特別になる。
「洋食の店 紀の国屋」は、観光ではなく、暮らしの中にある一軒。
たとえば、気分を上向きにしたい午後に。たとえば、何もないけど、ちょっと外に出たい日に。
洋食を食べに行く理由なんて、それだけで、十分だと思う。