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布施のおすすめスポット

笑い声が運んでくる、たまごとケチャップの香り。【カフェ・サントノーレ】

布施のまんなか、ちょっとにぎやかな笑い声が聞こえてくる。商店街の角、「サントノーレ」の看板を横目に扉をくぐると、コーヒー片手に新聞を読む人、たまごサンドを頬ばる人、ケーキを囲んでしゃべり込むマダムたち。たばこの煙と湯気の向こうには、今日もいつもの顔が並んでいる。

喫茶店とカフェのあいだ、でもどこか“地元”と呼びたくなる場所。時間帯なんて関係ない。ただここに来れば、「いつもの風景」がちゃんと待っていてくれる。そんな布施の日常が、サントノーレにはある。

スポット情報
Cafe サントノーレ
住所 大阪府東大阪市長堂1-19-26GoogleMap
営業時間 8:00~16:00
定休日 火曜日
喫煙可否 喫煙可

たまごサンドで、朝がやさしくなる

朝8時、「サントノーレ」は静かに目を覚ます。
店先のシャッターが上がる頃、商店街にはパンの焼ける香ばしい匂いが流れはじめる。

モーニングは12時まで。
分厚いたまごサンドがテーブルに届くと、まるで朝ごはんの記憶にふれるような気持ちになる。甘く、やわらかく、包み込むような味。ふかふかのパンが、それをやさしく支えている。

もうひとつ、常連が静かに推してくるのが「胡麻トースト」だ。
黒ごまを練り込んだ生地は、焼くことでいっそう香ばしくなる。トーストをひと口かじると、カリッとした耳と、ふんわりと甘い中身がじわっと広がる。どこか懐かしく、少し新しい味。

ゆで卵とカットフルーツが添えられているのも、うれしい。
たくさんじゃないけれど、ちょっと得したような朝。誰かに教えたくなるような、でも自分だけの秘密にしておきたいような。

ナポリタンと、“ちゃんとした”昼ごはん

昼どきになると、店の表情がふっと変わる。
黒板に書かれた「ハンバーグ」「ナポリタン」「オムライス」——どれも、見た瞬間に気持ちがゆるむような響きだ。

とくに人気なのがナポリタン。
もちっとした太麺に、炒めた玉ねぎの甘さとケチャップのコク。パスタというより、“スパゲッティ”と呼びたくなる、あの感じ。鉄板じゃなくても、口の中に熱が灯る。

オムライスもいい。
ふわっととろけるたまごが、ケチャップライスと出会う瞬間。スプーンの先から湯気が立ちのぼる。
ハンバーグは、肉汁がじゅわっと広がるのに、後味は軽やか。ちゃんと、ごはんとしての力がある。

どの皿も、手がかかっているのが伝わってくる。そして650円(本日のランチはスープ・サラダつき750円)。
値段を出すのは少し野暮かもしれないけれど、この街で食べる「まっとうな昼ごはん」として、ちょうどいい。

午後3時、ミルクレープの魔法

3時をまわると、「甘いものだけ食べに来ました」という顔の人たちがちらほら現れる。

この店のミルクレープは、派手な飾りはない。
何層にも重ねられたクレープ生地と、やさしい甘さのクリーム。フォークを入れると、静かにほどけていく。

甘すぎない。でも、物足りなくもない。
生クリームのまろやかな脂肪分が、口の中にふわっと残って、しばらく余韻が続く。

もうひとつの人気者、デニッシュトースト。

外はサクッと、中はじゅわっとバターが染みている。そこに冷たいバニラアイスと、とろりとかけたメープルシロップかチョコソース。あたたかさと冷たさ、甘さと香ばしさのバランスが絶妙で、飽きがこない。

午後のまどろみの中で、小さなごほうびになる甘さ。「今日もちょっとがんばった」と思える味が、ここにはある。

ちいさな入口の、その奥に

「サントノーレ」があるのは、ブランドーリ2番街のちょうど真ん中。
こぢんまりとした入口を抜けると、1階と2階に客席が広がっている。

2階の窓際から見えるのは、布施の日常。
買い物帰りの人、仕込み中の飲み屋、歩幅のちがう人たちが行き交っている。

その窓辺には、いつものマダムたち。
ケーキをひと口ずつ味わいながら、笑い声をあげて、おしゃべりに花を咲かせている。
その声が天井にふわっと跳ね返って、店の空気までやわらかくなる。

喫茶店って、たぶんこういう場所なんだと思う。
おしゃべりも、沈黙も、どちらも過ごしていい時間として受け止めてくれる。

笑顔とテンポのいい、気持ちのいいリズム

この店は、今では少し珍しい“全席喫煙可”。
けれど、不思議と空気が重たくならない。煙の向こうに、どこかやさしさがある。

そんな空気を軽やかにしているのが、カウンターの中で立ち働く女性たち。
髪色やメイクは少し華やかで、制服はきちんと着こなしている。動きには無駄がなくて、でもどこか楽しげな雰囲気をまとっている。

「ナポリタン、今日はよう出てますよ〜」
そんな声かけが、押しつけがましくなくて、でも自然と背中を押してくれる。

テンポのいい動きと、明るすぎない声のトーン。
ほどよい距離感で、ちゃんとこちらを気にかけてくれているのがわかる。

この店にまた来たくなるのは、料理の味だけじゃない。
きっと、そんな人たちのいる空気ごと、好きになってしまうのだと思う。

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