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布施のおすすめスポット

赤提灯の奥、だんじり男の笑い声【ちょいのみ|居酒屋】

ふらっと吸い寄せられるように赤提灯をくぐると、カウンターだけの店に、ぶっきらぼうなおやっさん。
だけど、その声のトーンと、さりげない一皿の味付けに、なんだか妙に安心してしまう。

大阪・布施の片隅で、今日も誰かが「ちょっと一杯」をきっかけに、深くておもしろい夜へと誘われていく。
ちょいのみ、なんて言ってるけど。
たぶんここは、一軒で完結してしまう場所だ。

スポット情報
ちょいのみ
住所 大阪府東大阪市足代1-16-15GoogleMap
電話番号 06-6724-2341
営業時間 18:00~
定休日 不定休
喫煙可否 喫煙可
SEKAI PASS特典 オリジナルせんべろセット

ちょっと、のつもりが。

布施駅から少し歩いた先、ネオンの光がまばらになる路地裏に、その店はぽつんと光っていた。

「ちょいのみ」――赤提灯が、夜の闇にぼやっと浮かぶ。
のれんをくぐると、すぐにカウンター。席は少なく、間隔も近い。常連の笑い声と、ガタンと置かれたジョッキの音が混じり合う中に、店主・孝太郎さんがいる。


無愛想に見えて、その実、抜群に人懐っこい。ちょっと黙ってるだけで、お客の様子をそっと見ているのだ。
「一人ですか? じゃあ、まず厚揚げいっときます?」

厚揚げが、ちょっとすごい。

この店の厚揚げは、ちょっと違う。
注文が入ってから、豆腐を揚げる。衣はカリッと、噛めば中はふわっとクリーミー。その上に、店特製の出汁醤油がひとまわし。

ビールを流し込むと、口の中にじんわりと余韻が残る。たった一皿で、胃袋も気持ちも、するりとこの店に馴染んでいく。

「ちょいのみ」なんて看板だけど、この一品でもう腰が落ちてしまう。

ホルモン焼きうどんと、麻婆豆腐。

しっかり食べたいなら、ホルモン焼きうどん。
ごろごろ入ったホルモンに、甘辛いタレが絡んだもちもちのうどん。鉄板の上で湯気をあげながら、隣の誰かの話をBGMに口に運ぶ。

豊富なメニューの中に気になる「マーボ豆腐」の文字

そして、なぜか麻婆豆腐。
少し意外なメニューだけど、これを目当てに来る常連がいるという。ピリッと辛くて、あと引くうまさ。胃の奥が目を覚ますような味だ。

どれもこれも、しっかり“食わせる”料理。
ちょっと、では終われない。

孝太郎さんという“お祭り”。

店主の孝太郎さんは、生まれも育ちも布施。
布施だんじりパレードでは足代地車の運営会にも参加する、筋金入りの“お祭り男”。

店内に飾られた写真には、法被姿でだんじりを引く彼の姿。
地元への愛と誇り、それがこの店の熱源になっている。

「ここは、布施の話が集まる場所なんですわ。」

地元の寿司屋の先代も、近所のスナックのママも、気づけば孝太郎さんの前に座っている。お互いの近況をぼやきながら、笑いあいながら。

飲み屋というより、“小さな交差点”。

孝太郎さんの魅力は、料理だけじゃない。
絶妙な間合いで、お客とお客の会話をつなげていく。

ブラックジョークを交えつつ、そっと隣の席の話に混ぜる。
やんちゃな昔話もあるらしいけど、それはまた今度、本人から聞くとして。

店内で初めまして同士が盛り上がって、二軒目へ――なんてことも日常茶飯事。
この店は、ただの居酒屋じゃなくて、人と人とが交差する小さなスクランブル交差点みたいな場所だ。

せんべろセットで、2軒目スタートもアリ。

オリジナルせんべろセット

もし「2軒目として行きたい…」と迷ってるなら、
生ビールやハイボールから2杯、小鉢2皿がセットになった「せんべろセット」を。

千円で布施の夜が、ぐっと濃くなる。
お得とかそういう話じゃない。“布施の人情”にひとくちで入れる感じが、いい。

変わらないもの、変わっていく町。

「ちょいのみ」は、布施商店街のシャッターをもう一度開けようとする動きの中で生まれた店でもある。

時代が変わっても、孝太郎さんのように地元を思う人がいて、
その気持ちに惹かれて集まる人たちがいて、
布施の夜は、今日もどこかでちょっと騒がしい。

誰かの武勇伝、誰かの弱音、誰かの人生相談。
小さなカウンターの上に、今日も物語がぽつぽつ生まれていく。

ちょいのみに込めた思い

ちょっと、のつもりが、気づけば長居していた。
笑って、食べて、誰かの人生の話に耳を傾けて。

それが「ちょいのみ」の魅力。
大阪・布施の深夜に、ぽっと灯る人情の赤提灯。

また来たいな、なんて思いながら、
少し酔った足取りで夜道を歩くのも、きっと悪くない。

 

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