入り口は、ちょっと見逃しそうになる。けど、一度のぞいたら、もう忘れられない。
布施の商店街の一角に、週4日・1日たった3時間だけ開く立ち飲み屋がある。
「立呑処おおにし」。
その扉の向こうには、あたたかい笑い声と、「よう来たな」の空気が満ちている。
ここでは、知らない人同士が、いつのまにか「つれ」になる。そんな魔法みたいな時間が、ちゃんと現実にある。
住所 | 大阪府東大阪市足代1-21-7GoogleMap |
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営業時間 | 17時~20時 ※大西商店(酒屋) 8時~19時 |
電話番号 | 06-6721-1448 |
定休日 | 月曜日、木曜日、金曜日 ※大西商店(酒屋)木曜日 |
喫煙可否 | 禁煙 |
SEKAI PASS特典 | 小グラスビール1杯100円 |
扉の向こうに広がる、“ただいま”の景色
夕方、布施の商店街をふらふら歩いていると、どこからか笑い声が聞こえてくる。立ち止まって耳を澄ますと、その声は、目立たない小さな扉の奥から漏れていた。
それが、「立呑処おおにし」。
週4日、たった3時間だけ。看板も控えめで、知らないと見逃してしまうほどの佇まい。だけど、扉を開けるとすぐに、ぎゅっと詰まった空間に人と人の距離がにじんでいる。
L字のカウンターにぎゅっと集まる常連たち。初めて訪れても、不思議と「よぉ来たな」と迎えられる。たまたま隣になった人と話し込むうちに、あっという間に「つれ」になってしまう。そんな場所。
「おかあさん、忘れてるで!」
まるでテレビで見たようなお笑い劇場?そんな日常が、この店にはある。
ある夜、カウンター越しに聞こえた声。「レンジでチンしたの、出すの忘れてるで!」と笑う常連さんに、ママさんが「ほんまやわ、ごめんごめん」と笑い返す。そのやりとりがあたたかくて、思わず頬がゆるんだ。
ここにあるのは、飾らない日常。特別なサービスも演出もない。けれど、ふとしたやりとりのなかに、この町のリズムが宿っている気がする。
好きな酒を、話ながら選ぶ楽しみ
隣接する「大西商店」は、この店のお酒の出どころ。日本酒、焼酎、ビール、ウイスキー、ワイン……ずらりと並ぶ瓶たちは、まるで図書館のように語りかけてくる。
特に力を入れているのは日本酒。地元の小さな酒蔵から、全国の名だたる銘柄まで、幅広く取り揃えている。堅苦しさは一切なく、好みをぽつぽつ話すうちに、ぴったりの一杯をそっと差し出してくれる。
たとえば、「すっきり系が好きなんです」と言えば、「じゃあ、これはどう?」とちょっとクセのあるお酒をすすめてくれる。そういう裏切りが、また楽しい。
「どこから来たん?」が合言葉
はじめての訪問でも、孤独を感じる暇はない。カウンターに立てば、すぐに声がかかる。「どこから来たん?」「大阪の人ちゃうやろ?」そんな何気ない言葉が、この町に溶け込む第一歩になる。
布施に長く住んでいる人が多いこの店では、「おすすめのうどん屋」から「昔の商店街の話」まで、なんでも教えてくれる。「おおにし」は、町の案内所でもあるのかもしれない。
会話を交わしながら、お酒が進む。どこか懐かしい音楽がBGMのように流れて、気がつけば肩の力が抜けている。
SEKAI PASSで、小さなごほうび
もし、SEKAI HOTEL Fuseに泊まっていたら、忘れずに「SEKAI PASS」を持っていこう。提示すれば、小さなグラスビールが100円で楽しめる。
たった100円。けれど、その一杯がもたらす体験は、きっともっと大きい。
「布施の夜、ここから始めるとええよ」って、誰かにそっと教えたくなる。
また会いたい人がいるから、来たくなる
一見、気まぐれに開いているようで、実はちゃんとリズムがある。「週4日、3時間だけ」の営業も、その絶妙な“短さ”が、ここにしかない特別をつくっている。
「また来るわな」と言えば、「待ってるで」と返ってくる。約束したわけでもないのに、自然と次の訪問を思ってしまう。
布施の空気に少しだけ酔って、見知らぬ誰かと笑い合う夜。
今日も、3時間だけ、その魔法が灯る。