昆布締め専門店「クラフタン」は、富山の郷土料理に新しい光を当てるために生まれたお店だ。
「こちらは真鯛の昆布締めです。煎り酒でどうぞ。」
店員さんが富山弁を交えながら、一皿ずつ丁寧に料理を紹介していく。
魚だけではない。肉、野菜、きのこ、豆腐まで昆布で締める。その一皿からは、富山で親しまれ続けてきた昆布文化の新しい表情が見えてくる。
食事をする。それだけの時間なのに、ここではいつもより少しだけ、味わうことに時間をかけたくなる。
| 住所 | 富山県高岡市小馬出町6 山町ヴァレー 二の蔵 GoogleMap |
|---|---|
| 電話番号 | 0766-75-9013 |
| 営業時間 | 11:30~14:00 18:00~22:00※要予約 |
| 定休日 | 水曜日 |
ひと口ずつ味わう昆布締め

昆布締めは、富山を代表する郷土料理のひとつ。 それでも、専門に味わえる店は多くない。
昼の人気は、いくつもの昆布締めを少しずつ楽しめる「昆布締め盛り合わせ定食」。
地元で獲れた季節の野菜や肉、魚など、その日の食材が並ぶ。
昆布締めは、食材ごとに締める時間も下処理も変わる。

「これはどんな味だろう。」
そんなふうにひと口ずつ旨みを確かめながら食べ進めていくと、小さなコース料理を味わっているような感覚になる。
合わせるのは、煎り酒。梅干しや昆布、鰹節を煮詰めてつくる、醤油が広まる前から使われてきた調味料だ。
塩気が前に出るのではなく、昆布締めの旨みをそのまま引き立ててくれる。
急いで食べると通り過ぎてしまう味だ。だから自然と、箸の動きがゆっくりになる。
手仕事が並ぶ食卓

料理が運ばれてくると、器にも自然と目が向く。
土ものの器、高岡銅器の皿、錫の器。
県内外のクラフト作家の作品が、料理を引き立てている。

店名の「クラフタン」は、「クラフト」から名付けられたもの。
職人の手仕事や工芸文化も大切にしたいという思いが込められている。

店内を見渡すと、カウンターや棚、ロゴ、オリジナルの器には昆布を思わせる波形のモチーフが使われている。
料理だけではなく、空間そのものが昆布を語っているようだ。
昆布締めを、もう一度見つめる

刺身を昆布で挟み、一晩寝かせる。余分な水分が抜けた身に、昆布の旨みが重なる。
この土地では昔から食卓で親しまれてきた味だ。
その背景には、北前船によって北海道から昆布が運ばれた歴史がある。
江戸時代から何百年ものあいだ、昆布は家庭の台所を通りながら、富山の食文化に溶け込んできた。
店主の竹中さんが昆布締めに着目したのも、この土地らしさを伝えられる食文化だと感じたからだった。

高岡で銅器製造業を営む家に生まれ、祖父や父がまちに関わる姿を見ながら育った竹中さん。自身も地域活動に携わるなかで、改めて富山と昆布の深い関わりに気づいた。
ところが、昆布締めを専門に扱う店はほとんどなかった。
「それなら、自分でつくろう。」
その思いから、クラフタンは始まっている。
子どものころ、母が食卓によく並べてくれた昆布締め。家族の記憶にあった料理が、いまは多くの人へ土地の食文化を伝える一皿になっている。
食卓から見えてくるもの

店員さんが料理を説明する声が聞こえる。
土鍋で炊いたごはんをひと口。昆布締めをひと口。
座敷では、家族連れが「おいしいね」と笑顔で机を囲んでいる。
そんな昼の景色の中にいると、昆布締めは郷土料理という言葉だけでは収まらないことに気づく。

この土地で受け継がれてきた食べ方や手仕事、人との会話まで、一皿の中に重なっている。
クラフタンで過ごす昼食は、お腹を満たすだけでは終わらない。富山が育んできた昆布文化を、ひと口ずつ確かめる時間になる。