高岡古城公園といえば、桜を思い浮かべる人が多いかもしれない。春になると、水濠のまわりに約1800本の桜が咲き、「日本さくらの名所100選」にも選ばれている。
けれど、地元の人たちは、花見の季節だけこの公園へ来るわけじゃない。夏は木陰へ涼みにきて、秋は落ち葉を踏みながら歩き、冬は雪が積もった濠を眺める。
散歩の途中に、学校帰りに、しごと中の昼休みに。季節が変わるたび、ここへ向かう理由も少しずつ変わっていく。
城の輪郭を歩く
SEKAI HOTEL Takaokaから歩いて13分ほど。住宅街を抜けると、水濠と赤い橋が見えてくる。
高岡古城公園は、加賀前田家二代当主・前田利長によって築かれた高岡城の城跡だ。城そのものは残っていないけれど、水濠や土塁には、いまも当時の面影が色濃く残る。
2006年には「日本100名城」に選ばれたけれど、公園を歩く人たちは、観光地を巡るような顔をしていない。
犬の散歩をする人。部活帰りの学生。コンビニの袋を提げた会社員。みんな、水濠を横目に、それぞれの日常へ戻っていく。
桜の下にも、いつもの景色
高岡古城公園は、「日本さくらの名所100選」にも選ばれている。

春になると、約1800本の桜が園内を覆う。水濠沿いを歩けば、淡い花びらが水面に流れ、赤い橋の色がその間に混ざっていた。
レジャーシートの上では、お弁当を囲む家族の姿。橋の近くでは、制服姿の学生たちが何度も写真を撮り直している。ベンチに座ったおじいちゃんは、芝生で遊ぶ子どもたちを微笑ましく眺めている。

花見の季節でも、この公園にはいつもの昼休みみたいな時間が流れている。
高岡の人たちにとって、ここの桜は特別なイベントというより、毎年ちゃんと戻ってくる季節の景色の一つだ。
季節を見に、水濠を歩く
季節がかわり、夏になると、水濠のまわりに濃い木陰ができる。
ベンチでは、部活帰りらしい学生たちがスポーツドリンクを飲みながら涼んでいた。蝉の声が響く日でも、水辺を渡る風は少し冷たい。

写真提供:高岡古城公園
秋になると、落ち葉が道の端へ吹き寄せられる。歩くたび、ぱりぱりと乾いた音が鳴った。わざと落ち葉の多い場所を選んで歩きたくなる季節だ。

写真提供:高岡古城公園
雪を乗せた枝が水面に映ると、ぼんやりと輪郭を溶かしていく。
高岡古城公園では、季節が巡るたび、水濠のまわりに違う景色が広がる。だから高岡の人たちは、ふと季節を感じたくなると、この場所へ足を向けるのだろう。
水辺をひとまわりして帰る

園内には、入場無料の動物園や護国神社、お土産販売所が併設した休憩処も点在している。イタリアンレストラン「古城亭」では、水濠の木々を眺めながら、ゆっくり食事を楽しむ人の姿もみられる。

水濠をぐるりと歩きながら、その日の気分で立ち寄れる場所が点在しているのも、この公園らしいところだ。
橋を渡って、濠を眺めて、少し遠回りして帰る。何気なく訪れても、来るたびにどこか違う表情を見せてくれる。

春の桜も、夏の木陰も、秋の落ち葉も、雪の日の水濠も。まちの人たちにとっては、どれも季節のおとずれを知らせる、毎年の景色なのだと思う。
だから今日もまた、散歩の途中に、学校帰りに、昼休みの合間に。ふと季節を見に、この公園へ足を向ける。