石畳の一本道に、「コン、コン」と金属を叩く音が響いている。軒先からは、「ちりーん」と風鈴の音。格子戸の奥では、鋳物職人たちが今日も手を動かしていた。
約400年前、高岡の鋳物づくりはこの金屋町から始まった。今も通りには工房が残り、人が暮らしている。そんな石畳を歩いていると、この高岡のまちで長く続いてきた仕事の気配が少しずつ見えてくる。
格子戸の奥で続く仕事
SEKAI HOTEL Takaokaから歩いて18分ほど。大通りの脇道に、445m続く石畳の通りが現れる。

両側に並ぶのは、「千本格子」と呼ばれる木格子の家並み。細い格子の隙間から、工房の灯りや、磨かれた金属の光がちらりと見える。
金屋町は、加賀前田家二代当主・前田利長が招いた7人の鋳物師から始まった町だ。
高岡銅器の技術を支えてきたこの場所では、今も工房が動いている。朝になると引き戸が開き、作業台の上に道具が並ぶ。金槌の音が響き、その横を学生や近所の人が通り過ぎていく。
工房と暮らしが、同じ通りの中にある。
錫に触れる
高岡では長く、真鍮を使った仏具づくりが盛んだった。その後、暮らしの変化とともに、食器や酒器など、日用品としての鋳物も増えていった。
その中で親しまれてきたのが、「錫(すず)」という金属。やわらかく、熱が伝わりやすい錫は、手に取ると体温がすっと移る。

金屋町の工房では、ぐい呑みや小皿づくりを体験できる場所もある。
木槌で表面を叩くたび、「コン、コン」と乾いた音が返ってくる。少しずつ模様がつき、金属に自分の手の跡が残っていく。

職人たちも、こうして毎日、手を動かしながら鋳物をつくってきた。磨き終えた錫には、やわらかな光沢が残る。
錫の酒器は、お酒の口当たりがまろやかになるとも言われ、お土産として選ぶ人も多い。家に帰ってからも、晩酌のたびに金屋町の景色を思い出す人がいるのかもしれない。
石畳に響く音
石畳を歩いていると、通りの奥から風鈴の音が聞こえてくる。「ちりーん、ちりーん」。
金屋町には、夏だけではなく、一年を通して風鈴が家の軒先にかかっている。

店先を掃く音。工房から聞こえる金属音。自転車のブレーキ音。風鈴の音は、そうした町の音に混ざりながら通りに響いている。
職人の息づかいに触れる
金屋町を歩いていると、展示されている工芸品を見るだけでは終わらない。

格子戸の奥から聞こえる音。作業台に並ぶ道具。工房に出入りする人たちの姿。
そうした景色から、この町で長く続いてきた仕事の気配が伝わってくる。高岡の鋳物文化は、職人たちの日々の仕事によって受け継がれてきた。
夕方になると、工房の灯りが通りに漏れ、風鈴がまたひとつ鳴った。