二軒目を探している夜。
商店街を歩いていると、オレンジ色の明かりが漏れる一軒の店がある。店先のショーケースには、古着を着せたマネキンとヴィンテージ雑貨。一見すると服屋のような外観だ。
扉を開けると、1970〜1980年代のレコードが流れ、カウンター越しにマスターが「いらっしゃい」と迎えてくれる。
グラスに氷が落ちる音。静かに流れ始める70〜80年代のレコード。
『Matthew Maman 1208』は、音楽をきっかけに、人との距離が自然と近くなるレコードバーだ。
| 住所 | 〒933-0823 富山県高岡市末広町14-45GoogleMap |
|---|---|
| 電話番号 | 0766-95-3838 |
| 営業時間 | 平日 19:30~0:00 土曜 18:00~25:00 日曜 18:00~23:00 |
| 定休日 | 木曜 |
| 喫煙可否 | 可 |
レコードをきっかけに、会話が始まる

席に着くと、マスターが棚から一枚のレコードを取り出す。ターンテーブルに針が落ちると、歌声や楽器の音が店いっぱいに広がっていく。
誰かにとっては、学生のころによく聴いた曲。
誰かにとっては、親の車で流れていた思い出の一曲。
「僕らの大スターだったよね。」
「クラスのみんな夢中やったちゃ。」
カウンター越しには、そんな声が聞こえてくる。

海外から訪れた旅行者が馴染みのアーティストを見つけ、「これをかけてほしい」とリクエストすることもある。
世代も、言葉も、肩書きも違う。それでも、一枚のレコードをきっかけに少し距離が近くなる夜がある。
一人で来ても、一人では終わらない夜

仕事帰りにもう一軒だけ寄りたい日。
旅行中、高岡の夜をもう少し歩いてみたくなった日。
この店には、一人で訪れる人も多い。

「この曲知っとる?」
お酒をつくりながらマスターが声をかけると、隣の席からも自然と声が返ってくる。
グラスの氷が少しずつ溶けるころには、さっきまで見知らぬ同士だった誰かと、音楽や旅の話をしている。
一杯だけで帰るつもりが、いつの間にか「もう一枚だけ聴いていこうかな」とこの場所に身をゆだねたくなる。そんな夜へと変わっていく。
好きなものが、そのまま店になった

店内を見渡すと、棚いっぱいに並ぶレコード、ヴィンテージ雑貨、アンティークのグラス。
何枚あるのか尋ねると、「数えきれんちゃね」とマスターは笑う。

レコードを好きになったのは、五歳のころ。絵本についていた一枚のレコードがきっかけだった。
それ以来、音楽も、洋服も、古いものも、自分の「好き」を少しずつ集めてきた。
「これはね…」とレコードをかけながら、その頃の思い出を話してくれることもある。

店名の「1208」は、息子さんの誕生日。
息子さんが社会人として巣立ったことをきっかけに、「年齢に関係なく、やりたいことが見つかったらいつでも始められる姿を見せたい」と、この店を開いた。
店に並ぶもの一つひとつに、マスターの歩んできた時間が重なっている。
商店街に、新しく灯った一軒

この店があるのは、かつて骨董品店や花屋、サーフィンショップなどが入っていた建物。
その頃の面影を残すように、店内にはヴィンテージの小物が並んでいる。

店先のマネキンを見て、服屋だと思って通り過ぎる人もいる。ショーケースをのぞき込み、気になりながらも、そのまま歩いていく人も少なくないという。
「入りにくそうにしとる人もおるけど、気軽に扉を開けてもらえたらうれしいね。」
扉の向こうでは、レコードの音に重なるように、誰かの笑い声が聞こえていた。