大阪府東大阪市出身のタレントであり、ファッションブランドも手がける松嶋尚美さん。バラエティ番組で見せる飾らないキャラクターで長く親しまれながら、独自の感性で活動の幅を広げてきました。
そんな松嶋さんが、SEKAIHOTELOsakaFuseの年間10,000人宿泊という節目に、かつて通っていた布施のまちへ帰ってきました。商店街を歩き、店に立ち寄り、昔の記憶といまの布施を重ねていく。
なぜ、布施にはまた来たくなるのか。観光地として整えられた場所ではない商店街に、なぜ年間1万人を超える宿泊者が訪れるのか。実際に布施を歩いた松嶋さんに、このまちに残る人との距離感、そして「また帰ってきたくなる理由」を振り返ってもらいました。
出会う人みんな「優しい」
久しぶりに布施を歩いて、改めて思ったんです。布施の人、みんな優しいよね。別に、特別なことがあったわけじゃないんです。盛大に歓迎されたとか、そういうことでもない。
でも、撮影してたら「ええよ、ええよ」って自然に待ってくれる人がいたり、すれ違う人が軽く会釈してくれたり。誰かが困ってたら、近くの人がなんとなく気にしてたり。そういう小さいことが、このまちには普通にある。
布施の人って、距離の取り方が独特なんですよね。ぐいぐい来るわけじゃない。でも、無関心でもない。ちょっと見てくれてる。ちょっと気にしてくれてる。ちょっと待ってくれる。その感じが、私はすごく好きなんやと思います。
今回、SEKAIHOTELOsakaFuseの節目のタイミングでこうして布施に帰ってきて、商店街を歩いたり、お店をのぞいたりしてたんですけど、歩いてるうちに昔の感覚をどんどん思い出していって、ああ、布施ってこういうまちやったなって。便利とか、にぎやかとか、そういう言葉だけでは言い切れない。人との距離が、ちょうど近いんです。

まちは、人で決まる
先日、収録した関西ローカルの番組で、ちょうどSEKAIHOTELの特集がありました。中でも印象的だったのが、開業前の地域説明会での話です。最前列に座っていたおばちゃんが、「事業の話じゃなくて、社長さん、あなたの話が聞きたい」と尋ねたそうなんです。
それ、めっちゃ布施っぽいなって思ったんですよね。
結局、人って「何をするか」だけじゃなくて、「誰がやるか」を見てるんやと思う。私もそうですけど、「この人やったら応援したい」とか、「この人に乗っかりたい」と思うから動くことって、結構あるじゃないですか。
どれだけ儲かるとか、条件がいいとかだけじゃなくて。もちろん、事業としてちゃんとしてることは大事やと思います。でも最後は、人なんやろなって。
SEKAIHOTELって、商店街の中に宿泊者さんが入っていって、銭湯とか喫茶店とか飲食店とか、まち全体をホテルみたいにしてるじゃないですか。これって、仕組みだけでは絶対できへんと思うんです。
店の人との関係がないと成り立たへんし、「この人らやったら一緒にやろか」って思ってもらえてるから続いてるんやろうなって。だからSEKAIHOTELは、ホテルというより、人と人の関係の中に泊まる場所なのかもしれません。

人と人がちゃんとつながっている
歩いていて思ったのは、布施にはまだ、人と人がちゃんとつながっている感じが残っているということでした。今って便利やし、なんでも効率よくなっていますよね。でもその分、人との距離って薄くなりやすいじゃないですか。
知らない人には関わらない。必要なことだけ伝える。迷惑をかけないように、踏み込まないようにする。それはそれで、現代では大事なことなのかもしれません。
でも布施には、まだちょっとおせっかいで、ちょっと気にかける感じがある。私はそれって、大阪の“色”やと思うんです。その中でも布施は、ちゃんとそれが残ってる。そこが魅力なんやろなって思いました。
きれいに整ったサービスじゃなくて、人が人を見ている感じ。相手のことをちょっと気にしている感じ。そういうものが、このまちの居心地をつくっている気がするんです。
布施って、外から見たら「便利なまち」って言われることが多いと思います。大阪市内から近いし、商店街もあるし、ごはん屋さんもいっぱいある。もちろん、それも魅力やと思います。でも、今回改めて感じたのは、それだけじゃないってことでした。
にぎやかな場所へ行くこともできるけど、戻ってきたらちょっと力が抜ける。布施って、そういうまちなんやと思います。昔から知ってる道があって、通ってた店があって、誰かと過ごした記憶が残っている。だからかな。歩いてると、なんか安心するんですよね。
布施は、わかりやすい観光地ではないかもしれない。でも歩いていたら、人との距離感がじわじわ伝わってくる。私が「優しい」って感じたのは、きっとそういうことなんやと思います。

旅人も、少しだけまちに混ざっていく
布施って、観光地みたいに「ここを見てください!」っていう場所ではないじゃないですか。でも、泊まった人たちが商店街を歩いて、店に入って、銭湯に行って、ごはんを食べて、ちょっとまちの人と話して。そうしているうちに、だんだん“外から来た人”じゃなくなっていく感じがあるんですよね。まちに少し混ざっていくというか。観光って、「何かすごいものを見る」ってイメージがあるけど、布施はちょっと違う気がする。普通に歩いて、普通に過ごしている時間が、あとから記憶に残る。それが、このまちのおもしろさなんかなって思いました。
うちの子どもも、銭湯に行くとめっちゃテンション上がるんですよ。ただお風呂に入るだけやのに(笑)。でも、家のお風呂とは違うじゃないですか。広くて、人がいて、湯船がいっぱいあって、帰り道があって。そういう時間って、大人になっても意外と覚えていたりする。

だから、合宿とかでもええかもね。汗の匂いとか、ちょっとガヤガヤした感じとか、布施ってそういう空気が似合う気がして。きれいに整いすぎていないというか、ちゃんと生活の匂いがある。人の声がして、店の人がいて、商店街が動いている。だからこそ、人と過ごした時間が残りやすいんやと思います。
SEKAIHOTELの滞在って、何か特別なアトラクションを楽しむというより、まちの中で誰かと時間を過ごすことに近いのかもしれないですね。
「実家ももう泊まられへんし、ここがええわ(笑)」また来たくなる場所って、実は理由を説明しにくいと思うんです。
私ももう、昔みたいに、ずっと実家に帰れるわけじゃなかったりします。時間が経つと、帰り方って少しずつ変わっていって。でも、その代わりに、まちの中に“もう一個の帰る場所”ができることってあるんやなって。泊まれる場所があって、歩ける商店街があって、銭湯があって、知ってる空気がある。地元そのものではないけど、ただの旅先でもない。なんか、その間みたいな感じ。
言葉で言うと難しいけど、結局「なんか、ええねん」が一番近い言葉かもしれないですね。SEKAIHOTELOsakaFuseも、布施にもともとあった空気や、人との距離感を、宿泊者が自然に味わえる形にしているんやと思います。商店街を歩いて、店に入って、人と話して、また帰ってくる。その普通の時間が、あとから思い出になっていく。だから、また来たくなるんです。

何か特別なことをしたからではなく、「あの時間、よかったな」が残っている。布施には、そのくらいの距離感がちゃんと残ってるんやと思います。
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