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2020.10.19.Mon

My ORDINARY vol.5 〜カコさんのハイヒールが響くとき〜

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コツコツコツ…

 

商店街に上品なハイヒールの音が響く。

この商店街でハイヒールを履いている人といえば、一人しかいない。

 

上品な笑顔でニコニコしながらやってきたのは

一件挟んでお隣のスナックのママ・カコさん。

 

いつも店先の窓の端から顔を覗かせて、少し照れたような顔でこちらを窺う。

カコさんの手には山盛りのおいなりさん。

それに気がつくと、みんなフロント業務はそっちのけで、目を輝かせてカコさんの方へ駆け寄る。

「みんなの分なくてごめんね~」

というけれど、その優しさだけでみんなの心は十分満たされている。

 

今日の夜ご飯はこれで決まりだ。

 

 

休憩中、夜ご飯を買いに行こうとした時にカコさんに会い

「何しに行くの~?」

『晩ご飯を買いに行ってこようかと…』

「かわいそうに~。おむすび握ってあげる!」

という会話から始まった差し入れ。

 

夏はオクラや山芋、トマトが入った素麺。

ちょっと涼しくなってきた最近は、おいなりさんと温かい豚汁。

味も最高に美味しくて、栄養バランスも○。

なにより優しい母の様なカコさんの愛情が、大阪という慣れない土地で一人暮らしをしている私の心を満たす。

 

 

ご飯を渡した後のカコさんは、ハイヒールを鳴らしながら颯爽とお店へ帰っていく。

その姿は渡しに来たときのニコニコかわいい姿とは一転、かっこいい。

 

女性らしく華やかなママさんという印象とは裏腹に、実は昔、トラックの運転手をしていたという男前な過去を持つ。

 

 

鹿児島生まれのカコさんは、お酒も相当強い。

お母さんに瓶ビールを飲まされて鍛えられたらしい…。

たまにフロントに来ては、世界のクラフトビールを片っ端から試している。

 

そんな豪快で男前な一面をたまに覗かせるのも、カコさんの魅力のひとつかもしれない。

 

 

コツコツコツコツ…

 

また今日もカコさんは商店街にハイヒールを響かせて、美味しいご飯を持ってくる。

母のような愛情と男前な粋と共に…。

 

Written by Natsumi Hamato